2020年代の通信技術として世界中で議論が活発化している第5世代移動通信システム(5G)。標準化作業こそまだスタートしていないものの、従来の移動通信システム以上の高スループット、超大容量、超低遅延、省電力性といった幅広い要求条件を目指すこと、そしてそれを実現するために様々な要素技術を組み合わせることなど、ビジョンや考え方にはコンセンサスが形成されつつある(ITpro関連記事:[MWC2014]活発化する5Gの研究開発、多様な要件を一つのネットワークで)。

 日本でも、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを5Gの実用ショーケースの場にしようと、官民挙げての取り組みが加速し始めた。2014年9月末には産学官連携による国内の5Gの研究開発推進の場として「第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)」が立ち上がっている(ITpro関連記事:オールジャパンで5Gを推進、第5世代モバイル推進フォーラムが発足)。

 NTTドコモは、民間サイドでの5Gの研究開発に積極的な一社だ。LTEで世界の研究開発や標準化をリードしたように、5Gでも積極的にメッセージを発信。仲間作りにも力を入れている。

 例えば2014年5月には、仏アルカテル・ルーセント、富士通、NEC、スウェーデン・エリクソン、韓国サムスン電子、フィンランド・ノキアの大手通信機器ベンダー6社と5Gに関する実証実験で協力することを発表。2014年10月開催の「CEATEC JAPAN 2014」では、主にビデオを使って、これらの実証実験に向けた取り組みを紹介した(写真1)。

写真1●ドコモがCEATEC JAPAN 2014で紹介したベンダー6社と進める5G実証実験の概要(出典:日経コミュニケーション2014年12月号特別レポート)
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 そんなNTTドコモは2014年11月28日、横須賀リサーチパーク(YRP)内のNTTドコモR&Dセンタで、例年恒例となる研究開発の紹介イベント「DOCOMO R&D Open House 2014」を開催した。ここでは5Gに関する最先端の研究開発の取り組みを一挙公開し、5Gのコンセプトを実証する動態展示をいくつも紹介した(写真2)。標準化の議論の材料となる伝搬特性やパフォーマンス評価なども進めており、ドコモからはLTEと同様に5Gでも世界をリードしようという姿勢が見えてくる。

写真2●NTTドコモはR&D Open House 2014で5Gの取り組みを一挙公開した
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動態デモで5Gビット/秒前後のスループットを実現

 5Gでは、これまで以上に幅広い周波数帯を組み合わせて利用する方向で議論が進んでいる。先に挙げたドコモがベンダー6社と進める実証実験も、既存周波数帯からミリ波帯まで、ベンダーそれぞれと周波数帯を分けて進めている。R&D Open Houseではその中から、スウェーデン・エリクソンと共同で進める15GHz帯を使った実証実験を動態展示を紹介していた。