筋力はつくかもしれないが…

 中之条研究で必須となっているのは「風呂以外は1日中、活動量計を365日身に着けてもらう」という姿勢。「そこまでの徹底は誰もが反対したが、今では14年目を迎えた。生活習慣が分かれば足腰を丈夫にする対策もできる。1日の生活に注目して健康づくりに最適なパターンを明らかにしたかった」(青柳氏)。

 活動量計も当初の機器から進化し、現在では任意に中強度の設定が可能なテルモ製の「メディウォーク」を採用している。活動量計を持つだけで歩数が多くなるという事実は、中之条研究を取り入れた奈良県の健康づくりでも明らかになっている(関連記事)

テルモ製の活動量計「メディウォーク」。任意の中強度設定が可能
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 また、継続的にデータを採取すると1日の記録が気になるため、運動の不足分を補うような行動に出るのだという。「中之条町の例だと、昨日より500歩少ないから家の周りを3周するとか、駐車場を最も遠くに停めてみるとか。そうやって住民がつじつまを合わせるようになっている」(青柳氏)。

 研究の結果、青柳氏は歩数(歩)と中強度活動時間(分)で予防できる病気・病態をまとめた。例えば、4000歩/5分が「うつ病」、5000歩/7.5分が「認知症、脳卒中、心疾患など」、7000歩/15分が「がん、骨粗しょう症、動脈硬化など」といった具合だ。理想とされる8000歩/20分の予防項目には「血圧症、糖尿病、脂質異常症、メタボリック・シンドローム」という、生活習慣病の代表格が並ぶ。

 「8000歩/20分が理想なのは、すべての変数において健康効果が出るから。ただし、この数値を超えると統計的に頭打ちになる。疲れ過ぎると免疫機能は逆に下がってしまう。8000歩/20分以上の運動というのは、筋力はつくかもしれないが、病気の予防にはならない」(青柳氏)。