地元ベンチャー企業の提案に共感

 実は、水増集落が入会地でのメガソーラー事業をテイクエナジーコーポレーションに委ねたのは、複数の応募企業から、同集落が主体的に選んだ経緯がある。水増ソーラーパーク管理組合の荒木和久組合長は、「規模の経済に対抗して、小さな農業をマーケティングやブランドによって産業化することで、若者が帰ってくる地域を作る、というプレゼンテーションは心に響いた。企業規模などにとらわれず、竹元親子のベンチャー企業に集落の将来をかけてみようとの結論になった」と振り返る。

 水増ソーラーパークの事業用地は30年ほど前に放牧に使われたことがあるが、それ以来、有効活用されなかった。地目は荒地だが、共同所有する集落の財産のため、毎年、集落の住人が総出で野焼きし、灌木や雑草が生い茂るのを防いできた(図9)。しかし、住民の高齢化が進む一方、若者がいないため、危険も伴う野焼きなど、その管理作業が大きな負担になりつつあった。有効活用について議論する中、メガソーラーによる売電事業も候補に挙がったが、建設費が工面できないと諦めていた。

図9●入会地は毎年、野焼きをして雑草の繁茂を防いできた(出所:日経BP)
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 荒木組合長が山都町役場を訪れた際、そんな話をしたところ、熊本県がメガソーラーの用地を探していると分かった。県は、メガソーラーの候補地をホームページで公開し、売電事業を実施したい民間企業を募るマッチング事業に力を入れていた。

 水増集落の入会地は、この仕組みを利用して、発電事業者を募ったところ、14件もの応募があった。県のマッチング事業では、県が関与するのはここまでで、応募者の中からどのように事業者を選ぶかは、水増集落に任された。そこで、同集落では、「あれこれ悩んだ末、応募者全員に直接、プレゼンテーションしてもらうことになった」(荒木組合長)。