売電収入の5%を集落に還元

 複数の家畜を飼うのは、環境教育の場として小学生の遠足を誘致したり、農作業の体験イベントなどを実施したりして、地域外から人を呼び込むことで地域の活性化を目指すからだ。同時に「堆肥舎」で作った堆肥を苗床で活用し、その苗を集落の共同圃場や集落の農家に提供する。安全・安心な農業生産を集落全体に広め、農水省の「日本の棚田百選」にも選ばれた棚田米などを「水増」ブランドとして知名度を高めることを狙う(図8)。こうした構想にかかる資金は、メガソーラーから得られる収益を活用する。

図8●農水省の「日本の棚田百選」にも選ばれた水増集落の棚田(出所:日経BP)
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 水増集落では、「水増ソーラーパーク」を管理するために「水増ソーラーパーク管理組合」を設立した。常勤一人と18人の非常勤からなる。テイクエナジーコーポレーションは、土地の賃料として年間500万円、加えて売電収入の約5%(約500万円)を集落に還元する。テイクエナジーコーポレーションは、集落と連携してこうした構想を支援するため、マーケティング包括協定を結んだ。

 すでに2014年11月、水増ソーラーパークを会場に、NBL(ナショナルバスケットボールリーグ)の熊本ヴォルターズの選手たちと一緒に、新米の「稲刈り体験」を実施し、好評だった。このイベントは、熊本バスケットボール(熊本市)とテイクエナジーコーポレーションが協力して開催・運営したものだ。

 テイクエナジーコーポレーションの竹元一真社長は、もともと東京でIT関連の企業に勤めていた。脱サラして、2012年8月に父親の竹元茂一氏(同社会長)とともに、ベンチャー企業を設立した。「日本の将来を見据え、エネルギーと食糧の自給率を高める事業を一生の仕事にしたかった」(竹元社長)と起業の動機を語る。「固定価格買取制度(FIT)は、その収益を再生可能エネルギーと農業振興に再投資してこそ意義がある」と竹元社長は言う。

 メガソーラーの売電収入の5%を地域に還元することは、売電事業の収益性を低下させることになる。その点に関し、竹元茂一会長は、「もともと地域コミュニティと連携するNPO(非営利組織)にかかわってきたので、まったく抵抗感はなかった。東日本大震災の後にFITが始まったことを考えれば、再生可能エネルギーで地域を活性するのは自然な流れ。簡単なことではないが、一歩一歩、積み上げていきたい」と気を引き締める。