北九州市は、公害克服の過程で得られた人材や技術を活用し、世界の「環境首都」を目指している。その主な舞台となっているのが、若松区響灘地区だ。資源循環によってゼロエミッションを目指す「エコタウン事業」を早くから推進し、リサイクル工場が稼働している。ここ数年は、メガソーラー(大規模太陽光発電所)が続々と発電を始めた。

 加えて、2014年3月、同地区でまた一つ、環境負荷を低減する先進的な取り組みが動き出した。CO2を排出しない電気でバスを走らせる「ゼロエミッション交通システム」だ。メガソーラーに大型蓄電池と急速充電器を併設し、太陽光で発電した電力を電気バスに充電するという仕組みだ。東レエンジニアリング(東京都中央区)と北九州市交通局が連携し、市営の路線バスで導入した。

 電気バスは、響灘地区にある「エコタウンセンター」とJR戸畑駅間の片道約10kmを平日に1日2往復する。料金は340円で、軽油を燃料にディーゼルエンジンで走る通常の路線バスと同じだ。導入した電気バスは三菱重工業製で、72人乗りの大型バスだ。大型電気バスの営業運行自体が国内で初めてのことになる。

 緑をベースに白の縞模様が斜めにデザインされた電気バスの車両番号は「ZERO-01」と「ZERO-2」の2台(図1)。車体の前面とサイド上に「電気バス」、サイド下に「ゼロエミッションバス」と書かれてあり、一目でそれと分かる。乗り込むとノンステップの低床式になっていて、環境に対してばかりでなく、人にも優しい仕様になっている。

図1●北九州市交通局が導入した2台の電気バス(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]