東京大学 大学院医学系研究科 医療情報経済学分野(医学部附属病院 企画情報運営部) 教授の大江和彦氏は、2014年12月11日に東京大学で開催された「第2回 健康長寿ループの会」(主催:東大COI機構)に登壇。「ICTがこれからの医療にもたらすもの」と題して講演した。

講演する大江氏
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 大江氏はまず、NFC(near field communication)などの近距離通信技術を用いたモバイル機器やヘルスケア機器が普及した状況を挙げ、ヘルスケア分野などで「体の近くで使うデバイスが非常に重要になってきた」と指摘した。同氏らのグループは、糖尿病患者が血糖値や運動、食生活を自己管理することを支援するスマートフォンベースのICTシステム「DialBetics」を開発。ヘルスケア機器からNFC経由でサーバーへ送信される測定データを基に、データ判定やアドバイス生成を自動で行うシステムである。

 糖尿病患者を対象に追跡期間3カ月のランダム化比較実験を行ったところ、DialBeticsを利用したグループではHbA1cや血糖値、BMIが有意に下がるとの結果が得られた。従来はこうしたICTシステムが「医学的に本当に効果があることを示した研究はほとんどなかった。今回の成果は、モバイルヘルスで医薬品と同等の効果が得られることを示した点で、世界的に注目されている」という。今後はモバイルヘルス技術などを活用しながら、「在宅・日常生活のデータと医療データを組み合わせた大量のデータを解析できる環境を、いかに構築するかが重要になる」。