ノーベル物理学賞の受賞記念講演を行う天野浩氏
ノーベル物理学賞の受賞記念講演を行う天野浩氏
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 2014年12月8日(現地時間)、スウェーデンのストックホルム大学で行われたノーベル物理学賞の受賞記念講演で、赤崎勇氏に続き登場したのが天野浩氏である。同氏は、高品質なGaN結晶を可能にしたAlNによる「低温バッファ層」と、p型GaN層の研究成果について紹介。最後は、若い研究者にメッセージを送った。講演後、会場を後にする天野氏に講演の自己採点をしてもらったところ、「60点」と厳しめの評価だったが、会場から何度か笑いが起きるなど、大いに盛り上がった。

 低温バッファ層による高品質なGaN結晶を初めて実現した当時を振り返った。当時は1985年の2月で、修士課程(マスター)の最後の年。2カ月後の4月から、博士課程に進む人や就職する人が一般的で、天野氏のように研究に没頭していることは珍しかったという。そのため、「非常に孤独な実験だった」と振り返り、会場の笑いを誘った。

 バッファ層に利用しようと考えていたAlNは、本来は1200℃以上で作る方が望ましいが、製造装置が古く、なかなか温度が上がらなかった。そこで、低温のままでAlNのバッファ層を作ってからGaN結晶を作ったところ、「材料を流し忘れたのではないか」と思うほど平坦できれいなGaNができていたという。

GaNのセッションには4人しかいないときも

 続いて、p型GaNの研究について当時の様子を語った。天野氏らははじめ、Znを使っていたが、その後Mgをドープし、かつ電子線を照射することで、p型GaNの作製に成功した。

 その頃は、まだZnSeによる青色発光素子の研究が盛んで、学会でGaNのセッションに参加すると、天野氏と赤崎氏の他は2人だけ、計4人しかいなかったこともあったことを話すと、会場は笑いに包まれた。ただ、赤崎氏の講演であったように、p型GaNができてから多くの研究者がGaNに関心を寄せるようになった。