ここに来て、SIM(Subscriber Identity Module)に関する大きな話題が相次いでいる。一つは米アップルが新型iPadの発売に合わせて「Apple SIM」と呼ぶ、後から書き換え可能なSIMを投入してきたことだ(ITpro関連記事:iPad Air 2は順当な進化だが、「Apple SIM」は業界にサプライズ)。米国と英国の一部の通信事業者との短期的な契約に利用できるとされているが、長期的にはアップルが完全に通信事業者を土管化する動きにもつながりかねないと業界に波紋を呼んでいる。

 もう一つ、総務省が「SIMロック解除に関するガイドライン」の改正案を公開したことも大きな動きになるだろう(ITpro関連記事:SIMロック解除義務化もロック可能期間は事業者に委ねる、総務省のガイドライン改正案)。SIMロック解除に従わない場合は業務改善命令の対象とすることで実効性を確保した。SIMロック解除の義務化によって、端末とネットワークがほぼ一体的に提供されてきた日本のモバイルビジネスは大きな転換期を迎える。

 携帯電話事業者にとってSIMとは、事業者のアイデンティティーとも言えるような、かけがえのないビジネス基盤である。特に海外では、ネットワークの設備や運用をベンダーにアウトソースしている事業者も多い。こうした事業者にとっては、周波数のライセンスとSIMの発行こそが携帯電話事業者たらしめている肝となっている。このようなビジネスの前提となっていたSIMが、上記のような動きによって揺らいでいる。携帯電話事業者の今後のビジネスやサービスに与える影響も少なからず大きいと言える。

 一方、このようなビジネス基盤となっているSIMについては、その機能について詳しく紹介される機会は少ない。格安SIMブームによって、以前に比べSIMを抜き差しする人は増えた。しかし、例えばSIMカード上でJavaアプリが走ることを知っている人は少ないのではないか。

 今回、改めてSIMに関するベーシックな機能を調べたところ、意外に知られていない機能が多かったので、まずはそれを紹介したい。そしてApple SIMをはじめ昨今登場しつつある書き換え可能SIM(Reprogramable SIM)がもたらす影響についても考えてみたい。

 なお今回、SIMの機能を調べるうえでは、英調査会社であるCSMGが、英国情報通信庁である「OFCOM」向けに作成したレポート「Reprogrammable SIMs: Technology, Evolution and implications」(2012/9/25)がとても役に立った。以下の説明は当該レポートの情報を一部参照した。こちらは公開情報となっているので、興味のある方は原文の一読をお勧めする。