今年9月、一部電力会社による太陽光発電などの再生可能エネルギー設備に対する系統連系の回答保留により、太陽発電事業者は予定していたプロジェクトを余儀なく延期することになりました。このような経営リスクに対して太陽光発電事業者は、どのように備えるべきか。また、プロジェクトを中止した時の会計処理について解説します。

(1)メガソーラー事業開始までのプロセスとリスク

 メガソーラー事業は、開始まで下記のプロセスを経なければならず、各場面で取引や交渉の相手より承諾等を得なければなりません(図1)。グリーン投資減税を利用して設備投資額全額の即時償却を受けるには、2015年3月末までに工事を竣工しなければならないので、系統連系の回答を待たずに工事発注した事業者もいたようです。

図1●メガソーラー事業の開始までは、いくつもハードルがある(出所:安田 祐一郎氏)
[画像のクリックで拡大表示]

 メガソーラー事業者は、事業開始までのリスクを考慮しながら、事業に参入しなければなりません。また、万が一事業が停止した時、損失を負担する体力が自社にあるか見極めた上で、メガソーラー事業へ参入すべきでしょう。

(2)土地の権利取得時に考慮するリスクと対応策

 メガソーラー事業者は、最初に事業用地の所有権又は賃借権を取得します。しかし、次のプロセスである設備認定や系統連系が不調に終わる可能性もあります。そうなると土地への投資額の価値はゼロになり、投資額相当の損失を負担することになります。

 このようなリスクを回避するには、設備認定や系統連系が成約されることを条件に効力が発生する、条件付きの売買契約を売主と締結する方法などが考えられます。

(3)工事発注時に考慮するリスクと対応策

 電力会社による系統連系回答に先立って工事を発注した事業者は、回答保留のままではメガソーラー事業開始を開始出来ず、工事代金相当額の損失が発生します。

 このリスクに対しては、系統連系の回答前に工事発注を控えるしか対処の方法はありません。グリーン投資減税による即時償却は、2015年3月末までに工事が完成するプロジェクトが対象となっていますが、生産性向上促進税制を利用すれば、2016年3月までに完成する工事でも即時償却の対象となります。後者の税制の利用も選択肢に入れて、工事発注は慎重に判断すべきです。