志の高い企業を集める必要がある

 3人目として登壇したのは、医療従事者の立場から、神戸市地域医療振興財団 西神戸医療センター 臨床工学室 主査の加藤博史氏である。同氏は日常的には臨床業務を担当しながら、週末や休日を利用してこれまで約2年半、医工連携に携わってきた。

西神戸医療センターの加藤氏
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 これまでの具体的な取り組みとして、「医療機器開発についての情報交換と定例会の開催」「参入企業へのセミナー形式の講義」「病院見学会」「多職種によるニーズ抽出ディスカッション」を挙げた。

 このうち病院見学会では、新規参入の意志のある企業を集め、土曜日の午後(13~16時の3時間)に院内の7部署を実際に見て回ったという。だが、どうしても駆け足の見学になってしまうことから、次に平日2日間にわたり合計16部署の見学を実施した。

 「正直、見学会だけではニーズの掘り起こしには直結しない。しかし、現場を見ることなく医療機器産業に入ってくるのはかなり無謀な話。こういう機会をぜひ利用してほしい。ただし、目的がないとただの見学で終わってしまうため、今後はより高い意志を持つ企業、参入分野を絞った企業の見学会を密に開催することが重要だ」(加藤氏)。

 一方、多職種によるニーズ抽出ディスカッションによって吸い上げたニーズは、データベースにまとめて共有しているという。抽出のポイントとしては、漠然と大きなテーマを設定するのではなく、事前準備をしっかりとする、医師個人の考え方や知識の差を極力なくす、偏った知識や経験値を排除する、といった点を挙げた。

 「特定の個人から出たニーズはリスクも大きい。自分もその1人だった。複数の医療従事者、さまざまなコーディネーターの意見は必要になってくる。医療現場には、開発情報や助成金などの最新情報が集まっているので、企業は積極的に収集する姿勢が必要だろう」(加藤氏)。