ブラシレスDC(BLDC)モーターの電力源として、Liイオン2次電池の採用が始まっている。電池駆動時間の大幅な延長を可能にするからだ。特にLiイオン2次電池の採用に積極的なアプリケーションは、ドリルやチェーンソー、リーフブロワーなどの充電式電動工具、電動バイクや電動車いすなどの小型電動車両、無停電電源装置などである。Liイオン2次電池駆動のBLDCモーターの広範な普及には、同電池搭載に伴う課題を解決するMOSFETブリッジドライバーがカギを握る。

Liイオンは内部インピーダンスが高い

Liイオン2次電池は、Ni-Cd 2次電池やNi水素2次電池、Pb蓄電池などに比べて、エネルギー密度が2~3倍も高い。このため、電池パックの外形寸法と質量の低減が可能になる。また、電動バイクや電動車いすの場合、電池パックの外形寸法や質量を増やさずに、1充電当たりの電池駆動時間を延ばせる。

 しかし、Liイオン2次電池では、エネルギー密度が高いことが別の問題を引き起こす。すなわちLiイオン2次電池の内部インダクタンスが非常に大きいため(100nH~500nH)、モーター駆動にPWM信号を使用すると、大きなリップル電圧が発生する。最も一般的な解決策は、MOSFETブリッジの両端に十分な静電容量のキャパシターを追加することだが、パッケージ寸法やコストの制約から実現できない場合が多い。

 例えば、携帯型電動工具のケースでは、ブリッジの両端に最小限の容量のキャパシターしか搭載できないケースが多く、大きなリップル電圧が発生してしまう。出力電圧が18~20Vの標準的なLiイオン2次電池パックでは、ブリッジキャパシターの容量が小さい。負荷が大きくなると、リップル電圧の谷の部分が5Vに低下する一方で、山の部分が36Vに達することがある。回転子(ローター)がロックしたときなどの過負荷状態では、出力電圧は非常に低いレベルまで低下する。こうしたケースは、ドライバーではなく、コントローラーでの対処が望ましい。