ヤギでなく、ヒツジを放して除草の実験

 一方、鹿島建設は、環境負荷を削減する目的から、ヤギを使った除草に取り組んできた。草刈り機を使うのに比べ、放したヤギに草を食べさせれば、CO2と騒音、廃棄物の3つが減らせる「トリプルゼロ」の利点があるという。また、同社が東京都調布市の社宅で実施した「ヤギ除草」の実験では、外来種のセイタカアワダチソウが衰退し、日本在来のイネ科の雑草が勢いを取り戻すなど、生物多様性を保全できる効果も分かってきた。

 こうしたなか、固定価格買取制度によって国内にメガソーラーが次々と建設され始め、雑草対策が共通の課題となってきた。そこで、メガソーラーにも、ヤギ除草が応用できる可能性があると考えた。だが、課題があった。「ヤギは高いところに飛び乗る習性があるので、メガソーラーに放すと、パネルに上がって傷つける心配がある」と、環境本部グリーンインフラGr.の山田順之グループ長は言う。

 そこで、「ヤギよりおとなしいヒツジの適用を検討し、実際に『那須ちふりメガソーラー』で実験することになった」(山田グループ長)。ヒツジは、埼玉県の農家からコリデール種3頭を借りた。同種はニュージーランド原産で角がなく、日本の気候にも比較的、適応し、かつては毛肉兼用に国内でも多く肥育されていた。今回の3頭は、全て生後1歳未満の子羊で、雌2頭、雄1頭を10月1日から3日間、メガソーラー内に柵を作って放した(図8)。

図8●1歳未満の3頭のヒツジを放した(出所:鹿島建設)
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 結果は良好だった。当初の計画では、1頭が1日で10m2の草を食べると見込んでいたところ、その2~3倍の広さに生える草を食べたという。ヒツジを放した範囲にはメヒシバ、ヒメジョオン、イヌタデ、カナムグラ、タチイヌノフグリなど、複数の草が生えており、3頭はそれらを好き嫌いせずにほとんど食べたという(図9)。

図9●好き嫌いせずにすべての草を食べた(出所:鹿島建設)
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 人が見ていない時も含め、ヒツジの行動を把握するため、3日間すべての時間をビデオに録画して確認した。その結果、「心配されたようなパネルに上がる行動はなく、パネルの下で休む様子が見られた。また、鳴き声が騒音になることも危惧していたが、まったく鳴かず、草を食べていない時間帯の多くは草を反芻していた」(山田グループ長)。