300万kWに達した「低圧敷地分割」

 実は、この「低圧敷地分割」こそ、今回、保留という措置に踏み切るにあたって、最も頭を悩ませた問題です。今年3月に大量の設備認定が集中したのは、買取価格が36円から32円に下がったことによる駆け込みとよく言われますが、九州の場合は、低圧敷地分割の駆け込みも重なりました。低圧敷地分割という手法は九州が発祥で、件数・容量を見ても、全国的に九州が突出しています。接続申し込みのある低圧敷地分割は、現在約250万kWにもなり、3月末の駆け込みの相当数を占めています。稼働済みを含めれば300万kWを超えます。低圧敷地分割の駆け込みがここまで大量でなければ、今回慌てて保留しなくて済んだかもしれません。

 低圧敷地分割の問題点は、他の事業者と比べた公平性、社会的コストの問題があります。50kW未満の低圧連系は、高圧連系に比べると、電力系統に与える影響が少ないことから、電気主任技術者の配置が不要であったり、接続申し込みの手続きが簡素化されたりするなどの優遇があります。事実上、高圧や特別高圧の設備規模であるにもかかわらず、法的には低圧に区分されることで、事業者間で著しい不公平が生じます。

 例えば、鹿児島県には、本来、出力約2000kW(2MW)のメガソーラー(大規模太陽光発電所)になるところを1区画49.9kW、40区画に低圧分割している案件が、2サイト並んで約4000kW(4MW)分あり、すでに稼働しています。2つのメガソーラーであれば、2つのメーターで済むのに、80個ものメーターを付けています。これは無駄な社会的コストと言えます。

 また、本来、500kW以上の太陽光発電所であれば、需給調整の必要上、30日まで無補償で出力を抑制できる「30日ルール」の対象になりますが、低圧分割した場合、このルールが適用されません。電力系統に対してメガソーラーと同様の影響を及ぼすにもかかわらず、出力抑制のリスクを負わないことは、高圧案件の事業者から見れば不公平です。電力会社にとっては、安定的な系統運用手段を確保するうえで、大きな不利益になります。

――政府は、もっと早く低圧敷地分割の禁止に踏み切るべきでした。

能見 法律を作り、そこの何らかの閾値があれば、うまく法の規定をかいくぐって、有利なビジネスをしようとする動きが必ず出てきます。読みが甘かったと言えば、そうかもしれせん。実は、10月21日に回答保留を解除した低圧(50kW未満)案件については、FIT開始時では、一般個人ではなく事業用を想定していました。9月25日に発表した保留の対象から家庭用10kW未満(余剰買取)を除いたことで、消費者保護を図ったつもりでした。しかし、実際には10kW以上の太陽光パネルを住宅に併設し、全量を売電する一般の人もいました。住宅メーカーなどは、10kW未満と同じように個人向けに販売しており、やはり消費者保護の観点から保留を解除することにしました。これも低圧敷地分割と同様、本来の法の主旨とは異なる面があります。ただ、容量は約32万kWに過ぎないので、影響が小さいと判断しました。

一方、低圧敷地分割は、約250万kWに達し、ケタが違います。保留中の低圧敷地分割の案件の中には、本来6万kW(60MW)以上のメガソーラーを1000以上に分割するものまであります。ここまでくると、違法性がないからと言って、接続を受け入れるには問題があります。