秋晴れのパシフィコ横浜で開催された
[画像のクリックで拡大表示]

 「ICTを用いた血圧管理の将来展望」――。2014年10月17~19日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された「第37回 日本高血圧学会総会」では、こんなタイトルを冠したパネルディスカッションが開かれた。ICT(情報通信技術)を用いた血圧管理の実証プロジェクトなどに携わってきた国内外の5人の医師や研究者が、プロジェクトから見えてきたICTの有効性や課題を紹介した。

家庭血圧を医療機関につなぐ仕組みが整う

 日本高血圧学会(JSH)が2014年4月に発行した「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)では、医療機関で測る「診療室血圧」と家庭で測る「家庭血圧」が異なる場合、家庭血圧を優先するという内容が初めて盛り込まれた。「医療機関で測る血圧は、家庭血圧に比べて(いわゆる白衣現象などにより)5~10mmHg高くなる。家庭血圧の方が(血管系)疾患の発症率ときれいに相関することが分かっており、信頼度が高い」(ガイドライン作成委員長で札幌医科大学学長・理事長の島本和明氏)からだ。同内容のガイドラインへの記載は、世界初という。

 ただし、高血圧かどうかの境界値として同ガイドラインで採用されている「140mmHg(収縮期血圧)/90mmHg(拡張期血圧)」は、診療室血圧の値。家庭血圧ではそれより5mmHgずつ低い135mmHg/85mmHgが境界値となる。

 家庭血圧の方が精度や再現性に優れることは以前から指摘されていた。だがこれまでは、家庭で血圧を精度よく測り、そのデータを医療機関と共有する仕組みが不足していた。昨今では、無線通信機能を備える家庭用血圧計や、スマートフォンとの連携サービスの登場により、その課題は克服されつつある(関連記事)。パネルディスカッションでは、こうした環境が血圧管理にもたらした変化や、そこから得られた知見を各登壇者が紹介した。