九電にとっても苦渋の選択

――固定価格買取制度(FIT)の今後の見直しを巡る報道にも、新エネルギー小委員会での討議内容を超えた憶測記事が目立ちます。

太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長(出所:日経BP)

鈴木 新エネルギー小委員会の委員が個人的に、非公式の場で、見直しの持論を記者などに語ることはあり得ます。そのコメントを報道する場合、本来であれば、「~という意見がある」とすべきです。しかし、なかには、「委員会で検討している」という表現になり、記事によっては、「経産省が検討している」という言い方にまで飛躍している例さえ見られます。

 こうした事実と異なる報道が続いているために、最近では、一部の媒体に関し、報道内容への不信感が広がり、最初から記事内容を話半分に捉える人も増えています。JPEAへの問い合わせが増えているのは、こうした背景もあります。

――マスコミの報道姿勢に混乱を助長する面があったとしても、九州電力による接続申し込みへの「回答保留」が、再エネ事業者から見て唐突だったことも否定できません。そもそも、法律では、「保留」という措置を想定していません。

鈴木 まさにその通りで、新エネルギー小委員会の場でも、弁護士の資格を持つ委員が、「保留」の法的な問題点に言及しています。ただ、「数カ月間、保留」という措置については、九電にとっても苦渋の決断だったことは間違いありません。関係者から聞いたところでは、当初、九電は「1年程度の受付停止」を、経産省に打診したようですが、それでは世間の理解が得られないとして差し戻され、何度かやりとりするなかで「数カ月間、回答を保留する」という形で落ち着いたようです。

 九電が当初、「受付停止」にしたかったのは、接続申し込みが殺到し、現場がそれを処理しきれなくなっていたからです。受け付けてしまえばまた業務量が増えます。各エリアで接続申請を審査する担当者は、積み上がった接続申請の書類を前に、精査している時間的な余裕がなく、「本当に全部つなげられるのか」と不安になり、「一度、時間をかけて評価すべき」との声が出てきたようです。

 九電本社が各エリアでの接続申請を足し合わせると、電力需要の低い時期の負荷を大きく上回ることが分かり、現場の声も踏まえ、いったん時間をかけて接続可能量を評価することを決断したようです。2013年度末に設備認定が急増してから、9月末の保留の発表に踏み切るまでに半年を要したのは、九電本社が現場の実態を把握するまでに時間がかかったこと、そして九電本社と経産省の調整があり、それが時間的なロスになったようです。

 結局、九電が「保留」に踏み切ったのは、通常の業務の流れでは急増する接続申請に対応できなくなったことが原因です。ただ、2014年3月に設備認定がここまで殺到するとはだれも予想しませんでした。九電の対応を責められない面もあります。