写真:栗原 克己
写真:栗原 克己
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 2014年のノーベル物理学賞を受賞した米University of California Santa Barbara校(UCSB) 教授の中村修二氏が、現在の心中を語った。青色LEDを実用化した経緯や現在の研究テーマを始め、同氏らが立ち上げたベンチャー企業、その経験から感じた日本と米国のベンチャー企業を取り巻く環境の違いなど、話題は多岐に渡った。本稿では、中村氏が語った現在の研究テーマを中心に、その概要を掲載する。インタビューの詳細については、日経エレクトロニクスや日経ビジネス、日経テクノロジーオンラインなどで順次掲載する予定である(取材班)。

 LEDの性能向上にはどうしても限界があります。その代表が、「ドループ現象」。電流密度を高めると、発光効率が下がってしまう現象です。物性に由来するものなので、解決が非常に難しい。半導体レーザーであればドループ現象がありません。しかも一度発振してしまえば、(理論的には)効率を100%にできます。

 こうした理由から、効率が100%近い発光体を目指し、新しい半導体レーザーを開発しています。そのために、新しいベンチャー企業も昨年(2013年)立ち上げました。企業の名称や具体的な成果などはまだ詳しくは言えませんが、周囲があっと驚くようなすごいレーザーを作製中です。近いうちに、この分野で大きな変革が起きることになるでしょう。

 応用先としてまず見込めるのが、レーザープロジェクターです。これを使えば、床や天井など、あらゆる場所に映像を投影できるようになります。高出力レーザーができれば、明るい部屋でも映像が見られるようになるでしょう。しかも、安価に大画面を実現できる。レーザープロジェクターなら、100インチを30~50万円で実現できる。液晶テレビであれば200万~300万円くらいするのではないでしょうか。

 ほかにも、レーザーの用途はあります。例えば、照明分野。現にドイツBMW社の「i8」は、ヘッドライトにレーザーを搭載しています。