窒化ガリウム(GaN)は、もともとは青色LEDや次世代DVD向け半導体レーザ用の材料として研究が進められた。その結果、GaNを用いた高輝度な青色LEDや緑色LED、Blu-ray Disc用の青紫色半導体レーザが製品化され、普及している。
発光素子に続いて、GaNの優れた物性から高周波素子への応用も検討された。携帯電話基地局やレーダなどに用いる高周波トランジスタの開発が進み、こちらも実用化された。こうした発光素子や高周波素子の研究開発で培われた技術の展開先として、2000年ごろからGaNパワー素子の研究が始まり、2005年ごろから開発競争が活発化した。
炭化ケイ素(SiC)は1990年ごろからパワー素子への応用を目指した研究が始まり、2001年にはSiCショットキー・バリア・ダイオード(SBD)が製品化された。SiCに比べるとGaNパワー素子は後発になるものの、最近、GaNパワー素子の実用化に踏み切る企業が次々に現れている。当初は、パワー素子大手の米International Rectifier(IR)社の他、ベンチャー企業の米Efficient Power Conversion(EPC)社と米Transphorm社という3社にすぎなかったが、2013年中に少なくとも5社に増える見込みだ。
新たに参入するのは、日本勢のパナソニックとシャープである。両社はGaN系半導体を用いた発光素子や高周波素子の技術を持つ。その展開先として、各社は以前からGaNパワー素子の研究開発に取り組んでいた。