赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏がノーベル物理学賞を受賞したことで、注目を集めている青色LED。その材料として研究されてきたのが窒化ガリウム(GaN)です。そこで、近年実用化が進んでいるGaNパワー素子の開発動向とともに、GaN研究の歴史について紹介してる京都大学大学院の須田淳准教授の解説を掲載します(本記事の初出は、日経エレクトロニクス、2013年5月27日号掲載の「GaNパワー素子の開発が活発に ノーマリー・オフ動作にも道筋」です)。

 窒化ガリウム(GaN)は、もともとは青色LEDや次世代DVD向け半導体レーザ用の材料として研究が進められた。その結果、GaNを用いた高輝度な青色LEDや緑色LED、Blu-ray Disc用の青紫色半導体レーザが製品化され、普及している。

 発光素子に続いて、GaNの優れた物性から高周波素子への応用も検討された。携帯電話基地局やレーダなどに用いる高周波トランジスタの開発が進み、こちらも実用化された。こうした発光素子や高周波素子の研究開発で培われた技術の展開先として、2000年ごろからGaNパワー素子の研究が始まり、2005年ごろから開発競争が活発化した。

 炭化ケイ素(SiC)は1990年ごろからパワー素子への応用を目指した研究が始まり、2001年にはSiCショットキー・バリア・ダイオード(SBD)が製品化された。SiCに比べるとGaNパワー素子は後発になるものの、最近、GaNパワー素子の実用化に踏み切る企業が次々に現れている。当初は、パワー素子大手の米International Rectifier(IR)社の他、ベンチャー企業の米Efficient Power Conversion(EPC)社と米Transphorm社という3社にすぎなかったが、2013年中に少なくとも5社に増える見込みだ。

 新たに参入するのは、日本勢のパナソニックとシャープである。両社はGaN系半導体を用いた発光素子や高周波素子の技術を持つ。その展開先として、各社は以前からGaNパワー素子の研究開発に取り組んでいた。