Cree社が2014年3月に発表した303lm/WのLED素子の資料
Cree社が2014年3月に発表した303lm/WのLED素子の資料
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 赤崎氏、天野氏、そして中村氏による青色LEDの発明については、何年も前からノーベル賞の受賞を期待する声があった。そしてこれまでは、毎年受賞を逃してがっかりする、の繰り返しだった。

 なぜ今年は受賞できたのか。それは、スウェーデン王立科学アカデミーが発表した正式な受賞理由を見ると分かる。受賞理由の冒頭には、「高輝度で省エネルギーにつながる白色照明光源となる青色LEDの発明」とある。これを、一部報道にあるように、「青色LEDの発明」と省略してしまうと、なぜ今年の受賞だったのかが分かりにくくなる。青色LEDの発明の波及効果としてBlu-ray Discなどを挙げるニュースもあるが、間違いではないものの、受賞理由としては少々的はずれかもしれない。

 今年受賞できたのは、既存の照明を凌駕する、高輝度で省エネルギーのLED照明が、まさにこの1~2年で実現可能になってきたからだろう。白熱灯の発光効率は15~20lm/W、蛍光灯は器具込みで60~100lm/W。これに対して、しばらくはLED照明の器具込みの発光効率(器具効率)は蛍光灯と大差がない水準だった。これでは、「20世紀は白熱電球が照らした。21世紀はLEDが照らす」(スウェーデン王立科学アカデミー)とまでは言えない。なぜなら、蛍光灯でもよいからだ。

 LED照明の器具込みの発光効率(器具効率)が100lm/Wを大きく超えるようになったのは、2013年ごろから。一部のLED照明製品の器具効率は2014年前半には140~190lm/Wと急速に高まり、蛍光灯をはるかに超えるようになった(関連記事1関連記事2)。器具効率で200lm/Wに達した開発例も出ている(関連記事)。スウェーデン王立科学アカデミーが触れたように、LED素子としては300lm/Wを超える米Cree社の開発例も2014年になって出てきた。これらの開発によって初めて、「21世紀の照明」といえる段階になったわけである。