今回はオランダが、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の普及に成功した理由を紹介しよう。オランダと、本連載の第1回で紹介したノルウェーとでは、EV、PHEVの普及に関して3つの違いが挙げられる。

  • オランダはノルウェーと異なり、2台目の自家用車(セカンドカー)を持つ習慣がない
  • カンパニーカー(一定条件のもと社用車を自家用車同様に使える)制度がある
  • PHEVもEVとほぼ同等の優遇施策(インセンティブ)を受けられる

 バカンスシーズンに年に1~2回の遠出をするオランダの人々にとって、長距離走行を苦手とするEVだけを保有するのは、なかなか勇気がいることだ。一方で、同国は国土が狭く人口密度も高いので、2台目の車を保有するのは経済的でない。そこで登場したのがPHEVだ。オランダではPHEVもEVと同等の優遇施策を受けられたので、2012年初頭から順調に台数を増やしていったのだ。2013年末、三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」とボルボ「V60」が同国で発売されたことで、普及にますます弾みがかかることになった。ところがこの間に優遇施策の変更はなかった。すなわち魅力的な車両が市場拡大を牽引したのだ。

 欧州では、企業が従業員への福利厚生の一環として、社用車を従業員に自由に使わせる「カンパニーカー」という制度が普及している。これは通勤だけでなくレジャーなどにも利用可能な車だ。福利厚生という性質上、企業から付与されるカンパニーカーの車両価格の25%は、従業員の個人所得税の課税対象とされる。オランダではEV、PHEVをカンパニーカーに採用した場合、個人所得税の課税対象から免除することを決めた。個人所得税が時に50%を超えることで有名な同国である。従業員の立場から見れば、これはとても大きなインセンティブだ。車両を購入する企業にとっても、EV、PHEVの車両価格の36%が環境フレンドリー投資として経費に算入できる。利益を計上している企業にとって、カンパニーカーでのEV、PHEV優遇施策は、節税と従業員満足と環境イメージの向上を同時に図れる、まさに「一石三鳥」の施策だったという訳だ。