前回紹介したノルウェーの電気自動車(EV)の普及政策は、車両購入時の補助、自動車税の免除、優先レーンの利用許可など、普通の自動車に対して圧倒的に有利な条件(インセンティブ)を消費者に提示するものだった。その結果、ノルウェーではすでに3万台以上のEVが街中を走り回るようになった。ここで気になるのは、このような補助金や税金減免が一体いつまで続けられるのかという点だ。Global Smart Grid Federation(GSGF)で日本が中心となって取りまとめた白書は、このような政策の持続可能性についても考察が行われている。成功事例と失敗事例の双方を見ていこう。

 まずはEV事例の前に、天然ガス自動車(NGV)の普及政策に関する2つの国の好対照な事例を紹介しよう。NGVは第2次オイルショックを機に、各国で積極的に普及が図られた。なかでもニュージーランドは、政府がNGV購入に補助金を給付し、ガス燃料にも補助金給付と税金減免を行った(最終価格はガソリンの約3分の1)ことで、1980年初頭に11%もの市場シェアをNGVが占めることになった。ところが1985年に政府が各種補助金や優遇施策を打ち切ると、1995年にはNGVが市場からほとんど消滅してしまったのだ(下図参照)。

世界での天然ガス自動車(NGV)の普及の推移
出所:Sonia Yeh “An empirical analysis on the adoption of alternative fuel vehicles:The case of natural gas vehicles” Energy Policy 35 (2007) 5865-5875
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