「甲斐の国メガソーラーステーション」は、山梨県甲府市の倉庫の屋根の上にある出力約1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)である(図1)。この倉庫を運営する斉藤倉庫(東京都調布市)が設置した。

図1●甲斐の国メガソーラーステーションの上空からの画像
(出所:斉藤倉庫)
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 斉藤倉庫は、東京都調布市に3カ所、立川市と甲府市に1カ所ずつ、合計5カ所の倉庫を運用している。年間売上高は4億5000万~5億円で、同社の齊藤亀三社長は、「メガソーラーを開発した企業の中では、国内最小の規模かもしれない」と強調する。

 施工には、屋根の補強や塗装を含めて約3億円を要した。年商の半分以上に相当する額だが、メガバンクや地方銀行から好条件で融資を受けられという。

 屋根の上にメガソーラーを設置したきっかけは、甲府市の倉庫(以下、甲府倉庫)を貸している物流企業からの助言だった(図2)。再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度(FIT)が施行される直前の、2012年初夏の頃だった。

図2●甲府倉庫を借りている物流企業の勧めで設置
(出所:日経BP)
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 その物流企業は、自社で所有する拠点の屋根を使った太陽光発電の経験から、新築する倉庫の屋根上にも太陽光発電システムを設置し、FITを活用した発電事業に取り組むことを決め、斉藤倉庫にも勧めた。

 斉藤倉庫にとって、太陽光発電は取り組みやすい新規事業だったという。倉庫のビジネスは、土地を探し、倉庫を建てた後、約10年間かけて建設費を回収する。

 太陽光発電も、倉庫を建てる代わりに発電システムを設置する以外は、長期間で資金回収するストック型ビジネスモデルとして親和性がある。その上、FITを活用すれば、20年間、買取価格が値下げされないという、倉庫ビジネスにはない魅力があった。

 また、甲府倉庫の立地が、発電事業に向くと考えた。山梨県は日本で最も日照時間が長い上、甲府倉庫の近辺には、日光を妨げる高層建築物などがない。

 さらに、甲府南インターから石和方面に抜ける国道140号(笛吹ライン)に近接しており、電力消費地が近くにある。高圧送電線は目の前にあり、連系しやすい。

 こうした理由から、「しっかりとした発電システムを設置すれば、FITによる買取期間が終わった後も、地域の低コストな電源として、売電事業を継続できる可能性もある」と、齊藤社長は考えた。