宇都宮大学 農学部の杉田昭栄教授
(出所:日経BP)

メガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設時や運用時に生じるトラブルの一つに、「カラスが太陽光パネルの上に石を落とし、パネルのカバーガラスを割って破損させる」ことがある。カラスはなぜ、太陽光パネルの上に石を落すのか、こうした被害を抑制する有効な手段はあるのか、カラスの生態や人間社会とのかかわりに詳しい、宇都宮大学 農学部の杉田昭栄教授に聞いた。

――地上に大量に並ぶ太陽光パネルに、カラスが石を落とし、表面を覆うカバーガラスを割られてしまい、交換を余儀なくされたという被害を受けることがあると聞く。

杉田 わたしの研究室にも、数社から相談があった。カラスが上空から石を落とし、太陽光パネルのガラスが割れる被害のほか、太陽光パネルの間を結ぶ配線を、クチバシで突いて損傷させる被害を受けたというものだった。

 いずれも、被害は、設置したうちの一部のパネルや配線に留まり、全面的に被害が広がったわけではなかったこともあり、具体的な対策を取るまでには至らなかった。

 相談を受けていて関心があったのは、太陽光発電所の立地だった。このうち2カ所は、酪農用の畜舎に近い場所にあった。

 畜舎が近くにある場合、牛や豚が食べるエサの管理方法が粗雑だと、カラスなどの野鳥が集まりやすいことがある。

 こうした畜舎が近くにある地域から、カラスによるさまざまな被害の相談を受けることは、これまでにもあった。その場合、まず、畜舎に対して、共同で地域のカラスを減らす対策を提案することを勧めてきた。唐突に、畜舎にエサの管理の改善を要求するのは、難しい面がある。

 また、音声やアドバルーンなどを使って、カラスを警戒させることも、一時的に有効だが、太陽光発電所は、農家の田畑などに比べて広いので、まだ勧めたことはない。

 テグス(釣り糸)を張っておき、テグスの揺れで驚かせ、野鳥を追い払うのも有効な手段だが、これも太陽光発電所に取り付けるには、広くて大変そうだ。

 太陽光発電所には、砕石が敷き詰められている場合がある。カラスが敷地内の砕石を落しているならば、鉄道の線路沿いに敷かれている石同士を固定する工法などを応用できるのではないか。