競合の手法よりも「原理的に有利」

 実は、1分子解析技術の開発ではクオンタムバイオシステムズに先行するベンチャー企業が存在する。英国Oxford Nanopore Technologies社だ。

 Oxford Nanopore Technologies社が採用する測定原理は、膜たんぱく質中に形成したナノサイズの穴(ナノポア)にDNAを通し、その際のイオン電流の変化で塩基配列を読み出すというもの。4種類の塩基はそれぞれ体積が少しずつ異なるため、ナノポアを通る際にブロックするイオン電流量に違いを生じる。この差を読み出すというわけだ。同社は手のひらに乗る「USBサイズ」のシーケンサーの実現を目指し、既にプロトタイプ機を開発済みである。

 ただし、同社の手法には膜たんぱく質を用いることによる測定の不安定さや、「4塩基ほどの分解能しか得られていない」(川合氏)という弱点がある。測定安定性の高い固体デバイスで、しかも1塩基の分解能を持つクオンタムバイオシステムズの技術に軍配が上がるというのが、川合氏の見立てだ。