空いていた工業団地の敷地に着目

 道東地方は梅雨がなく、白糠あたりは秋から冬にかけて晴天が多い。年間の日照時間は2000時間超と道内では最も恵まれている。一方で降雪は北海道の他の地域に比べて少ない。気温は8月も最高気温の平均が21.9℃(1981年~2010年)と、東京(同31.1℃)などと比べると驚くほど涼しい。夏場など気温が25℃を超えると発電効率が落ちる太陽光パネルの“弱点”が、ここではほとんど問題にならない。

 気候条件に加えて、建設の決め手になったのは条件の良いまとまった広い土地を手当てできたことだ。敷地面積62haのユーラス白糠ソーラーパークは中小企業基盤整備機構が運営する「釧路白糠工業団地」の中にある。同工業団地は旧産炭地域の振興策として1973年に造成された。根室本線沿いに細長く整地された工業団地の総面積は308haと広大なものだ(図4)。釧路空港から7km、釧路港まで11kmという“臨空・臨海型”の立地をセールスポイントにしてきた。釧路市と石狩平野北部の滝川市を結ぶ国道38号線が隣接しており、陸運の便もいい。

図4●釧路白糠工業団地(出所:北海道)
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 すでに水産加工や食料品製造、製材、肥料など50社以上の工場が進出していた一方で、まだ広い用地が残っていた。この土地にいち早く着目したユーラスエナジーはFITが始まる前年の2011年から、中小企業基盤整備機構などと土地の取得に関する交渉を始めた。

 工業団地の資料によると分譲価格は1m2当たり740~780円。単純計算すると62haの用地取得にかかる費用は約5億円。30MWクラスのメガソーラーの用地費用としては割安と言っていい。工業団地内には工場の操業に備え電力を供給する容量6万VAの変電所が設置され、地下に6.6kVの高圧線が引き込まれているなど、インフラも整っている。すでに造成済みなのも発電所建設には有利だった。