このシリーズでは、中部電気保安協会の本店 保安部 太陽光プロジェクトチームによる、太陽光発電システムのトラブル事例や、それらのトラブルへの対応策、所属する電気主任技術者にどのように助言しているのかについて紹介する。同チームがまとめたトラブル事例集を基に、同チームの寄稿によって構成している。

 今回は、昇圧設備(キュービクル)内に、誤って設計よりも電流容量の小さいブレーカー(配線用遮断器)が設置されていた例を紹介します。

 太陽光発電所において、太陽光パネルで発電された電気は、パワーコンディショナー(PCS)によって直流から交流へ変換され、昇圧設備において昇圧後、電力会社に売電します。

 このため、昇圧設備は、PCSから出力される容量に見合ったものにする必要があります。これに対して、今回紹介する例では、PCSからの出力よりも小さい容量のブレーカーが、昇圧設備内に設置されていました。

 太陽光発電所の稼働前の「竣工検査」を担当した際に、事前に入手した図面を基に、それぞれの回路に流れる電流、電線(配線ケーブル)の種類・太さ、ブレーカーの容量などを把握して、現地に向かい竣工検査に臨みました。

 それぞれの回路のプラス、マイナスの極性の確認、および外観点検を実施していた際、PCSの交流側の容量400Aのブレーカーから、配線ケーブルが接続されていたのは、昇圧設備内の容量250Aのブレーカーでした。

 すぐに図面と照合したところ、昇圧設備内のブレーカーが、図面の指定よりも容量が小さいことを発見しました()。

図●昇圧設備内のブレーカーの容量が不足し、見落とせば売電できず
定格328Aの電流を出力するPCSに対して、昇圧設備内に設置したブレーカーが誤って容量250Aに(出所:中部電気保安協会)
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