トンボがパネルに産卵する現象を発見

 岡本保安係長によると、雑草が生えていると、地面の温度は10度以上低くなるという。「発電量を最大化する上で、定期的に雑草をすべて除いてしまった方がよいのか、影が掛からない分だけ除去した方がよいのか、検証していきたい」と言う。

図9●ツル性植物は、側溝に落とすと敷地に侵入しない(出所:日経BP)
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図10●トンボによる産卵が、白い斑点上の汚れの原因(出所:日経BP)
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 また、フェンスを越えて侵入してくるツル性植物に関しては、「ツルを排水用の側溝に落としておくと、日光で干上がり、それ以上、入ってこなくなる。あえてツルを除去しなくてもある程度、防げる」と言う。そこで、毎日の見回りの際に、足でツルを側溝に落とすようにしているという(図9)。

 「阿波西ソーラーヒルズ発電所」は、豊かな自然に囲まれているだけに鳥や昆虫の飛来も多い。当初、パネル表面に付いた白い斑点上の汚れが、なぜ生じるのか分からなかったが、その原因がトンボだと分かったという(図10)。「パネルの上に、よくトンボが飛ぶことは知られています。この発電所でも盛んに飛び交い、中にはオスとメスが交尾してつながっている様子もよく見ました。ある日、パネルを点検中、トンボがパネルに降下して、尾の先を打ちつけるような行動に気付きました。その後、注意深く観察したこところ、パネル上の白い斑点は、トンボが卵を産み付けた跡と分かりました。青いパネルの表面を池や川の水面と勘違いしているのでしょう」(岡本保安係長)。

 白い汚れ自体は、発電量に影響することはほとんどなく、一度、雨が降ると水に溶けて流れ、ほぼ消えるという。ただ、トンボの生殖には何らかの影響を与えている可能性もある。メガソーラーの建設は、「開発行為」ではないため、環境影響評価(アセスメント)を実施する必要はない。だが、今後、山間に巨大なメガソーラーが増えていくなかで、大量に敷き詰めたパネルによる生態系への影響が指摘される可能性もある。毎日、注意深くメガソーラーを点検することで初めて、こうした視点からも、貴重な知見が蓄積できる。岡本保安係長は、日報にこうした動植物の様子も、記録している。

 四国GAの大塚理事長は、「メガソーラーに常駐して記録した日報は、おそらく世界的にも珍しい。今後のメガソーラー事業にとって極めて貴重な資料になる」と話す。

●施設の概要
名称阿波西ソーラーヒルズ発電所
発電事業者ハンファQセルズジャパン(東京都港区)
発電開始日2013年7月
所在地徳島県阿波市阿波町東長峰308他
敷地面積4万2000m2
出力約2MW
年間予想発電量約210万kWh
EPC(設計・調達・施工)藤崎電機(徳島県阿南市)
太陽光パネルハンファQセルズ製の多結晶シリコン型(6828枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
架台クリーナジー社(オーストラリア)製
O&M(運用・保守)NPO法人四国グリーンエージェンシー(四国GE)