こうした推進派の一方で、マイナンバーの医療分野への活用に慎重な人々もいる。慎重派は、セキュリティ面を危惧している。もし病歴が漏れたとしたら、通常の個人情報漏洩どころではない被害を受ける可能性がある、と憂慮しているのだ。

 果たして、医療分野へのマイナンバー導入は、どうあるべきなのか。2014年6月に岡山市で開催された第18回日本医療情報学会春季学術大会で、これをテーマに開催されたシンポジウムでの議論の様子を中心にお届けする。

マイナンバーは診療情報と一緒に扱えない

写真1●左から向井治紀氏(内閣官房社会保障改革担当室審議会、副政府CIO)、石川広己氏(日本医師会常任理事)、中安一幸氏(厚生労働省 政策統括官付 情報政策担当参事官室 室長補佐)
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 「地域医療連携と関連政策」と題して行われたシンポジウムには、向井治紀氏(内閣官房社会保障改革担当室審議会、副政府CIO)、石川広己氏(日本医師会常任理事)、中安一幸氏(厚生労働省 政策統括官付 情報政策担当参事官室 室長補佐)の三氏が登壇した(写真1)。

 向井氏は、「マイナンバーの医療分野での活用について、誤解があるようなので、法令上どこまでやれるかはっきりさせたい」と切り出した。まず法律上は、「『番号を使うことが“できる”』となっており、絶対にやらなければならないわけではない。どこまでマイナンバーを利用するかは、各省庁で議論して、省令で決めることになる」と説明した。

 続いて医療関連の話題に移った。「2016年1月から、医療保険(健康保険、介護保険など)の徴収・給付事務にマイナンバーが利用されるが、病院間や病院と診療所の間での電子カルテ情報のやり取りで、診療情報といっしょに利用することはできない」と説明した。一方、企業内での健康保険関連業務での利用は可能だという。