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病院経営の観点から、低い敷地にも導入できるように

 医療機関からは粒子線装置に対して、照射法を切り替えたい、短時間に治療を終えたい、形状に合わせて照射したい、といった要望があり、三菱電機では、照射ノズルを開発したり、高線量率での照射を可能にしたり、高精度にスキャンできるようにしたりして医療現場のニーズに応えている。たとえば、同社はBLSノズルと呼ぶ照射ノズルを開発した。BLSは3つの照射法それぞれの頭文字。ブロードビーム(Broad Beam)では腫瘍に対して広く照射する。積層原体(Layer stacking)では皿を重ねるように照射。スキャニング(Scanning)では点描のように照射していく。1つのノズルで、部位に合わせて照射法を変えられる。

 また、民間病院でも導入の機運が高まる中で、病院経営の観点からは、低い敷地にも導入できるような装置の開発が望まれている。三菱電機は、たとえば陽子線装置の回転ガントリーの口径はそのままに、長さを従来の40%まで短くするなどして、装置の小型化を図ってきた。また、必要な機能を平面に配置するのではなく、加速機を下に、ガントリーを上に配するといった立体配置などで、設置面積を小さくしている。

 陽子線装置は2003年に静岡県立静岡がんセンターに納入した装置の設置面積が55m×28mだったのに対し、2013年には22m×20mまで小型化した。面積比で71%減である。炭素イオン線装置も、2010年に稼働を始めた装置が65m×45mだったのに対し、2013年から稼働した装置では74m×34mと14%小型化した。