第1回から第4回の連載を通じ、ヘルスケアビジネスへのBRMS適用事例、我が国のデータヘルス計画に対するBRMSの貢献について考えてきました。今回は締めくくりとして、この先10年から20年にわたりヘルスケアビジネスがどのように変わっていくのか、BRMSを含むICTがどのように貢献するのかを整理していきたいと思います。

ヘルス2.0

 この数年、「ヘルス2.0」という新しいムーブメントが米国の西海岸を中心に起こり、日本でも耳にするようになってきました。これは、最新のICTを活用することにより、生活者の行動や知恵に関する情報を集合知化し、ヘルスケアビジネスにおける新しい価値の提供を目指そうとする構想です。

 中核となるコンセプトは、「ユーザー自らが作り出すヘルスケア」です。具体的には、患者と医師の間における医療や処方に関する各種情報の共有、患者やその家族の経験を蓄積したデータベースの活用、利害関係者間のソーシャルコミュニティなどの支援、を実現しようとするもので、米国では大手のIT企業やeビジネスベンチャー、保険会社、医療機関が業界横断のコミュニティーを形成し、続々と新しい製品やサービスが市場に投入されてきています。

 このようなムーブメントの背景には、病院や医師だけに依存することなく、同様の体験をした患者同士のコミュニティによって情報を共有していこうとする草の根運動が根底にあるようです(図1)注1)
注1)「Health 2.0: Patients as Partners」by Bloomberg Business Week (2008.12.3)

図1 ヘルス2.0:パートナーとしての患者
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