理論通りに動作すれば高速なD-Waveだが、まだまだ解決すべき課題が存在する。

 その一方で、D-Waveをしのぐ性能が期待できる新方式の開発も進んでいる。日本独自の「レーザーネットワーク方式」だ。

 D-Waveマシンには、まだ乗り越えるべき課題がある(図1)。

性能に関する議論、数年は続きそう
図1●D-Waveに対する疑問と、それらに関する第三者による評価
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 一つめは、D-Waveマシンが本当に量子力学の現象(量子効果)を使っているのか証明することだ。これについては、「様々な検証によって、ほぼ確実だと見なされている」(西森教授)。具体的には、スイス・チューリッヒ工科大学や米国南カリフォルニア大学の研究者らが論文を発表している。

 二つめの課題は、性能に関するものだ。D-Waveマシンに関して、実は「従来型コンピュータより高速に問題を解くことはできないのではないか」という疑問の声がある。

 例えば、2014年1月にグーグルが発表した検証では、ある組み合わせ最適化問題ではパソコンに比べて3万5500倍高速になるという結果が出る一方で、違う問題ではパソコンよりも遅くなるという結果が出た。グーグルによれば、「計算対象となるデータの中に規則性がある場合、D-Waveマシンは非常に高速に解を得られる。しかしデータが完全にランダムである場合、解を得るのに時間がかかる傾向がある」という。

 NASAのビスワス副ディレクターは「現状のD-Waveは量子ビットの数が少ないため、スーパーコンピュータよりも高速だとは言えない。しかし今後、D-Waveの量子ビットが増えれば、スーパーコンピュータを超える性能が実現できると期待している」と語る。

 D-Waveで製造担当バイスプレジデントを務めるジェレミー・ヒルトン氏は、「2013年に量子ビットを128から512に増やしたところ、性能は数十万倍に伸びた。我々は今後、2014年内に1000量子ビット、2015年内に2000量子ビットを実現する予定だ」と語る。

 D-Waveマシンが理論通りの性能を発揮できるのか。その結果は数年内に分かる。