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「OSORO」開発プロジェクトに学ぶ、ヒットを生み出すためのヒント

ユーザーに価値を届けるデザイン・マネジメントの威力(3)

田子 學 = エムテド 代表取締役、アートディレクター/デザイナー、橋口 寛 = ユーフォリア 代表取締役
2014/08/08 00:00
出典:日経ものづくり、2013年12月号 、pp.63-65 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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 OSOROは洋食器業界におけるイノベーションの事例だが、他業界にも応用できるヒントが幾つも含まれている。そこで、OSOROの開発プロジェクトで責任者を務めた橋口の視点で分析することによって、そのヒントを提示したい。

  第2回「『OSORO』はどのように生まれたか」までに述べたように、2008年秋のリーマン・ショックを経て鳴海製陶は非常に厳しい経営環境に置かれていた。この状況は、コスト削減や品質向上だけでは打破できない。何らかの差異化を図る必要があるが、その具体的な解は見えていなかった。現在、このような状況に直面する企業は少なくないだろう。

  はっきりしているのは、そうした状況は、単一の解決策で打破できるような単純なものではないことだ。どれだけ商品を改善しても、それだけでは解決できない。こうした状況でイノベーションを生み出す方法論こそが、デザイン・マネジメントである。ここでは、その要諦となる[1]既存手法のアンラーニング、[2]社外の力を取り入れたプロジェクト体制、[3]もの以外の領域も含めたデザイン、の3つについて説明する。

  [1]は、慣れ親しんだ既存手法との決別である。歴史のあるメーカーは、どこも独自の商品開発プロセスを確立している。70年近い歴史を持つ鳴海製陶も同様だ。

 しかし、OSOROの開発プロジェクトでは、筆者は既存手法と異なるアプローチの必要性に初期段階で気付いた。なぜなら、縮小していく既存の市場に向けて、既存手法を踏襲して商品を開発したところで、大きな変化を生み出しようがないからである。

 こうした状況を打破するための解決策は、ユーザーへの洞察を深めることだ。ユーザーの生活に寄り添い、ユーザーの悩みや問題意識からインサイトを得て物事の本質を見抜き、洋食器という媒体を通じてユーザーにソリューションを提供する。百貨店への製造卸を主力としていた鳴海製陶にとって、そうした手法は従来と全く異なるものだった。

 米Apple社などとの協業で知られるデザイン・コンサルティング・ファームのIDEO社によれば、企業のイノベーションは、商品および消費者がそれぞれ既存か新規かによって、4種類に分類できる(図1)。企業が最もリソースを割いているのは、商品も消費者も既存の「漸進的イノベーション」であり、既存商品の改良や成功したブランドの拡張はこれに当てはまる。

図1●イノベーションの分類
IDEO社のRyan Jacoby氏とDiego Rodoriguez氏が作成した、「Ways To Grow Matrix」と呼ばれるマトリックス。イノベーションを、商品および消費者が既存か新規かによって4種類に分類する。出典:ティム・ブラウン著『デザイン思考が世界を変える』(早川書房)

 一方、OSOROは、これまでにない商品を従来と異なる顧客層に販売しており、「革命的イノベーション」に相当する。ただし、最初からそれを志向していたわけではない。前身のデイリープロジェクトで目指していたのは、日常使いの新規商品を既存の顧客層に販売する「進化的イノベーション」だった。しかし、いざOSOROの開発が始まると、商品のコンセプトなどから顧客や販路も刷新しなければならないことが判明し、結果的に革命的イノベーションへと切り替えることになった。

 革命的イノベーションは、4種類の中でも実現が最も難しい。商品の企画や開発、評価、営業などあらゆる業務のリソースは、従来の商品を従来の消費者に向けて供給するために最適化されているからだ。革命的イノベーションに挑戦するに当たっては、これまで習熟してきたプロセスをいったん忘れ(アンラーニング)、新しいプロセスを身に付けなければならない(ラーニング)。その実現には、経営層の強いコミットメントの他に、次に挙げる社外の専門家との協創活動が不可欠だ。

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