トラブルの発生地点に電流が流れ続ける

 もし、この間違いを見落としたまま発電を続けた場合、どのような問題が想定されるのでしょうか。集電箱からPCSの間の電線に、許容電流を超えた電流が流れ続けるために、電線を被覆が焼損してしまいます。

 この結果、直流の地絡や短絡事故が発生する可能性があります。こうした場合、PCSが内蔵している保護装置が働き、連系を停止します。

 連系の停止による発電量の低下だけで済めば良いのですが、最悪の場合、直流側の幹線のミスは、交流側にはない危険な状況を引き起こします。

 それは、太陽光パネルが発電を続けている間、直流の地絡や短絡が生じた地点に電流が流れ続けることです。短絡時でも、太陽光パネルから出力する電流は、最大動作電流の1.1倍程度にとどまるためです。

 接続箱内の直流出力側のMCCB(配線用遮断器)の許容電流を上回ることがないために、日光が照射して発電している間、電流が流れ続けることになります。日射がなくならない限り、直流の地絡や短絡事故が発生地点への電流の供給をストップできないことから、危険が大きいのです。

 これに対して、第12回で触れたような交流側の場合、同じように電線の太さ不足によって、許容電流を超えた電流が流れ続けた場合、受変電設備やPCSの保護装置が動作することで、出力を停止して短絡や地絡を防ぐことができます。

 「電線の太さが不足していた」という、単純な間違いですが、このような一つの単純な間違いによって、太陽光発電所のオーナーは多大な損失を被る可能性があります。

 特に、直流側にトラブルが生じた場合、太陽光が照射している限り、事故や故障の発生地点への電流の供給が止まりません。こうしたトラブルを、竣工検査時の外観点検での確認によって、防ぐことが重要です。

(次回は、8月21日(木)に掲載予定)