「住宅用なら可能で、なぜメガソーラーではできないのか」

 リゾートトラストは、東日本大震災の復興支援に取り組んできた。特に「グランドエクシブ那須白河」のある西郷村に対しては、震災直後から飲料水(ペットボトル2万4000本)を寄付したり、西郷村の被災者にホテルの大浴場を開放したりしてきた。復興支援イベントの開催など、地域に密着した活動を行なってきた。隣接する遊休地にメガソーラーを建設することが決まってからも、「地域貢献として、災害時に地域の人々に電源とEVをセットで提供する方針で設計を進めた」と、リゾートトラスト設計営繕部の大柴摂一朗部長は話す。

 「東日本大震災では、ガソリン不足と停電で移動手段に苦労した経験から、太陽光発電の自立電源でEVを充電できれば、非常に役立つ」と考えたという。「グランドエクシブ那須白河」では、BCP(事業継承計画)の観点から、非常用ディーゼル発電機の電気を敷地内のEV用充電スタンドに給電できるようにしたが、それでも発電機の燃料がなくなれば充電できない(図7)。隣接するメガソーラーで充電できれば、さらにBCPが進む。

図7●メガソーラー近くの「グランドエクシブ那須白河」に設置したEV充電設備(出所:日経BP)
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 だが、FITの枠組みのなかで、メガソーラーを災害時に自立電源とし、電力を自家消費するシステムにすることは、簡単ではない。FITの設備認定は、「系統連系する発電所」が前提で、自家消費することは想定していない。ただ一方で、東日本大震災以降、住宅用の太陽光発電システムでは、平時は系統連系し、停電時だけ自立発電する機能を付けることが一般的になった。メガソーラーを設計し始めた当初、「住宅用で可能なことが、メガソーラーでできないはずはない」という問題意識で取り組んできたという。

 実際、自治体が関与するメガソーラーなどでは、災害対策の一環として、自立発電機能を備える例が出てきた。それでも、手動で自立型電源装置に切り替えるパターンが多く、また非常用コンセントをフェンス内に設置することが一般的だ。法律によって、50kW以上の太陽光発電所はフェンスで囲む必要がある。フェンスには鍵をかけるので、非常用コンセントをフェンス内に設置した場合、使い勝手がいいとは言えない。いざというときに使えなくては意味をなさない。「非常用コンセントは、発電設備ではないという解釈で、協議の結果フェンスの外に設置できることになった」という。