災害時にはEVと非常用電源を無償で提供

 西郷村は、福島県中通り南部の高原に位置する。同メガソーラーは、緑豊かな丘の上に設置しているため、公道からは見えない。木々に囲まれた小道を登っていくと、3つのエリアに分かれた1万3200m2の敷地に並べた8320枚のパネルが見えてくる(図3)。太陽光パネルやPCSはすべてフェンスの中だが、PCSのすぐ脇のフェンスだけ「コ」の字型に凹んでいて、フェンスの外側になるコの字で囲まれたスペースに、非常時に使える100Vコンセントと、メガソーラーの仕組みを解説した表示板が設置してある(図4)。

図3●太陽光発電設備の周りは豊かな緑がある(出所:日経BP)
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図4●非常用コンセントと説明パネルをフェンス外に設置した(出所:日経BP)
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 FITを活用し、電力会社の送電網(電力系統)に連系して売電するメガソーラーは、災害などで電力系統が停電するとPCSが稼働を停止し、発電しなくなる。メガソーラーのPCSは、系統連系を前提に最大効率を維持するよう運転制御しており、電力系統の停電を察知すると安全装置が働き、稼働を止める。そこで、「リゾートトラスト メガソーラー那須白河」では、非常時専用に自立型電源装置を設置し、停電を察知すると自動的に切り替わるようにした。自立型電源装置は、パネル10枚分と繋がっており、最大2kWを出力できる。

 電源装置には、電圧100Vの家庭用と同じコンセントが付いており、家庭用電気機器に使える。リゾートトラストは、同メガソーラーの近くに総合リゾート施設「グランドエクシブ那須白河」を経営しており、電気自動車(EV)の「アイミーブ」を1台所有している。災害時に停電した場合、メガソーラーの非常用電源でEVを充電したり、携帯電話やパソコンの蓄電池を充電したりすることを想定している(図5)。同社は、地元の西郷村と災害対策に関する協定を結び、停電時にはEVとメガソーラーの非常用電源を無償提供することになっている(図6)。

図5●災害時に携帯電話を充電できる(出所:日経BP)
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図6●非常用コンセントで充電する電気自動車(出所:日経BP)
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