技術者がUXデザインを考える?!
皆さんは、UX(ユー・エックス)という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ユーザエクスペリエンス(user experience)の略で、日本語では「ユーザー体験」と訳されています。また、ユーザー体験を設計することを「UXデザイン」と呼び、UXDと表記したりします。UXデザインの考え方の詳細については、この連載のなかで解説したいと思いますが、ごく簡単に言ってしまえば「ユーザーの製品利用の状況をとことん考えた製品やサービスづくり」だと言えます。
現在、UXデザインはWebサービスやアプリケーション・ソフトウエアなどでは、すでに重要な考え方になりつつあります。また、UXデザインを意識して開発されたサービスも、いくつも登場しています。では、製造業ではどうでしょう? 特に現場の技術者の皆さんにとっては、UXデザインと言われてもピンとこないかもしれません。しかし、製造業こそUXデザインの考え方を取り入れることが求められていると、私は考えています。今回はその理由を、自動車を例に考えてみたいと思います。
車メーカーがUXデザインに本腰
若者の自動車離れといわれて、すでに数年が経ちます。この傾向は、日本だけでなく先進諸国では同様の傾向があるようです。そんな中、米Ford社は2010年に「MyFord Touch」という、車内の統合インターフェースシステムを発表しました(図1)。ドライバーの各種操作を集約し、タッチパネル操作、ステアリングスイッチ、音声入力などのインターフェースで操作できるようにしたものです。スマートフォンなどで若者にも馴染みのあるタッチ操作を導入して、若年層にもアピールする狙いがあったかもしれません。
すでに2013年時点でFord社の79%の車種に搭載されています。この動きに追従するように、米GM社をはじめとする各社も、スマートフォンなどの持ち込み機器とのコネクティビティを確保した、車内の統合インターフェースシステムを発表しています。すでに北米市場では、車は外装のデザインや性能だけでなく、車室内での情報機器の楽しみ方や操作の仕方で競争しつつあると言っても過言ではない状況なのです。