――医介連携のためのシステムとして、具体的にはどのような仕組みが求められていますか。

 看護師やケアマネージャーは、現場で非常にこまめに患者の記録を取っているんですね。「今朝、元気にお話をされました」といった内容です。言ってしまえば「絵日記」みたいなものなのですが、その情報量は膨大ですし、患者の生活の記録としてはとても重要です。しかも、こうした記録の中には医療の側、すなわち医師にとっても重要な情報が多々含まれている。

 ところが、そうした記録を医師が逐一見ている時間はないんです。ですから、介護記録から医師にとって重要な情報をマイニングするような仕組みがあればいいと思います。

 今、介護の現場でも「電子化」ということが盛んに言われています。医療現場以上に、業務を効率化する必要性が高いからです。介護現場ではそれこそ「30分刻み」の業務マネジメントが必要ですから、システムを導入しないと、効率的に運用するのはとてもムリなのです。

「むらせシニアメンタルくりにっく」が入居しているイオン四日市尾平店
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 ところが、電子化は進みつつあっても、「いかに医療へつないでいくか」という視点が欠けている。介護カルテのシステムをどう計画的に使うか、どう医療につなげていくのかという視点をもっと詰めていかないと、実際に使えるシステムにはなりません。

 介護の分野では中小規模の事業者が多いんです。ですから、例えばシステム構築に300万円といった費用が必要だと、彼らにとってはかなりの出費です。これが業務の効率的な運用につながらなければ、導入する意味はないわけです。

 ただ電子化すればいいというものではない、という事情は介護に限りません。電子カルテを使う医療機関は増えていますが、電子化のメリットを本当に活用できているところはまだ少ないと感じています。

――医介連携に向けて、クリニックはどのような役割を果たせそうですか。

 この先、「クリニックと訪問看護の連携」が重要性を増してくると考えています。ケアマネージャーと連携しながら、クリニックの医師が患者のトータルマネジメントを主体的に担っていく。もちろん、患者がクリニックとは別に病院にも通っているケースはありますから、クリニックから病院の情報にアクセスできる環境も必要だと考えています。

 今後、医師とケアマネージャーの関係をどう作っていくか、それを支えるシステムをどのように構築するか、というのが大きなテーマになります。医師からの指示で行われる行為は「医療」に当たるわけですから、患者の日常生活そのものをどう支えていくかについてはケアマネージャーのプランや指示によるところが大きい。医師とケアマネージャー、そしてケアマネージャーを支える看護師の連携が欠かせないのです。