稼働開始時よりも発電効率を上げるO&M

大和ハウス工業の濱 隆・取締役常務執行役員 環境エネルギー事業担当 兼 総合技術研究所長(出所:日経BP)

 さらに、O&M(運用・保守)の事業を強化していく。EPCサービスや建築などを通じた発電事業者とのつながりを生かしていく。ただし、既存のO&Mでは、大和ハウスの強みを発揮しづらい。これまでにないO&Mを構想している。

 例えば、メガソーラーの完成時よりも、発電効率を向上させるような手法を導入していくことを想定している。そのために、幅広く新たな技術を検討していきたい。

――買取価格の下落に対して、関連システムや部材、建設費のコストダウンは、追い付いているのか。

 現状では、原価の低減が追い付いていない。特に、建設時の労務費が上がっている。東日本大震災の復興事業や東京オリンピック関連の工事などが重なり、建築業界全体で、職人が不足し、資材が高騰している上、物流用車両や運転手まで不足している。こうした中で、コスト削減のスピードを上げていかなければならない。

――倉庫など、企業向けの大型の建築物を多く手掛けている中で、屋根への設置の依頼も増えているのか。

 新築する顧客の多くが、屋根上に太陽光パネルを設置するようになってきている。工場はスマートファクトリー、戸建てはスマートハウス、事務所はスマートオフィスを提案し、再生可能エネルギーだけでなく、蓄電池やLED照明、高効率な空調を組み合わせ、全体でエネルギーコストを下げる一環である。

――太陽光パネルの設置が多くなると、今後、倉庫の屋根の形状や材質が、パネルの設置に最適な方向に変わっていく可能性はあるのか。

 住宅の屋根は変わっていくだろうが、工場や倉庫の屋根は、それほど変わらないのではないか。壁面に太陽光パネルを設置することが増えてくると、緑化と太陽光パネルを併用した壁が増え、何らかの変化が出てくるかもしれない。

建築物の顧客の多さを生かした新電力に

――2016年には、電力の小売りが完全に自由化される。これに対して、どのように取り組んでいくのか。

 大和ハウスでは、2014年4月に新電力(特定規模電力事業者:PPS)としての登録を完了した。戸建て住宅からマンション、企業の事務所や倉庫など、建築物で多くの顧客を抱えており、電力の販売先を確保しやすい利点がある。例えば、住宅では「スマートコミュニティ」を形成し、そこに電力を小売していくといった事業を構想している。

 電力の小売り事業では、これまで手掛けてきたメガソーラーを電源として活用できればと考えている。ただし、太陽光発電は不安定な電源であり、できれば安定的な電源を確保したい。新電力には、多くの企業が参入し、そこでは安定した電源の奪い合いが始まるだろう。