「塩害の影響は読み切れない」

 重塩害地域に設置するパネルは一般的に「重度3」以上が推奨される。しかし、不二サッシでは「太陽光発電は20年間発電した実績がほとんどなく、塩害の影響は見通しにくい。最も過酷な試験合格品がベターと判断した」(外山生産本部長)。太陽光パネルを設置する物流倉庫は工場敷地の中では海から遠い側にあるが、屋根上は潮風にさらされる。重度6適合品はコストも高くなるが、塩害による出力低下などの不具合が生じにくいことを優先した。そして、物流倉庫の折板屋根とパネルを締結する設置金具(ハゼ金具)も一般的な鉄製ではなく、耐食性の高いアルミめっきステンレス(日新製鋼の「アルスターステンレス」)製を用いた。物流倉庫の脇は国道16号線が通る。パネルの脱落や落下につながる設置金具の腐食は何としても避けなければならない。

 今回、太陽光パネルを屋根に敷設した2つの物流倉庫は、1989年と1999年に建設したもので、工場敷地内の建屋の中では、比較的新しい。新耐震基準(1981年)を満たし、屋根の耐荷重性も十分なため太陽光パネルの搭載を決めた。

 不二サッシはメガソーラー建設に当たって複数のEPC(設計・調達・施工)サービス事業者から提案を募った。提案内容は初期投資を極力抑えたケースから、手厚い保守・メンテナンス(O&M)を含めたケースまで条件に幅があり、発電規模にも違いがあった。それに伴い、事業費の総額も約2億5000万円から約4億円まで大きな開きがあった。その中で同社が選んだのはオムロンフィールドエンジニアリング(東京都目黒区)が提案した出力1376kWで約4億円というシステムだった。「長期の信頼性を追求し、リスクを最小に抑え、トータルでの収益最大化を目指した結果」と外山生産本部長は説明する。

 今回、不二サッシが採用した太陽光パネルは米サンパワー製だ。スペックの高い塩害対策品だったことに加え、1年当たりの劣化率の低さと「25年の製品保証」も決め手になった。劣化率はメーカーが公表している数字だが、実績がそれを下回れば保証の対象になり得る。データ通りの発電量を維持できれば、不二サッシが検討したパネルの中では20年間の予想収支は最も良かった。

 パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製。性能への評価に加え、納品までの期間が短く、早く発電を始められる利点があった。