省エネと事業継承計画と太陽光

 このとき、水を運ぶタンクを集めるのに苦労したことで、非常時の水の大切さを痛感したという。今年5月、BCPの観点から大型の地下水膜ろ過システムを千葉工場敷地内に設置した(図3)。普段は工場内の飲料水や生活用水に使い、非常時は近隣住民や周辺企業に飲料水を供給する。市原市と締結した「緊急災害協力井戸協定」に基づくもので、1日に3万6000人分の飲料水を供給できる(1人1日当たり飲用量が3Lの場合)。自家発電設備があり、停電しても浄水可能だ。

図3●千葉工場敷地に設置した地下水ろ過システム。170m地下からくみ上げた地下水を浄水する。1日の浄水能力は110m3(出所:不二サッシ)
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 震災直後の電力不足対応では、東京電力からピーク需要の3割抑制を要請された。緊急対応として表面処理など電力を大量に消費する工程を夜間にシフトさせると同時に、コンプレッサーや冷凍機のクーリングタワーを省エネ型に置き換えるなど平時の消費電力の抑制にも力を入れた。2012年度の生産原単位当たりの電力消費量は2010年度に比べて12.1%削減できた。

 「太陽光発電の導入も、省エネやCO2排出削減活動の一環として環境安全部に検討してもらった」と外山生産本部長は話す。太陽光発電事業はもちろん収益事業であり、固定価格買取制度(FIT)を活用して全量売電すれば、それによるCO2削減効果は電気利用者全体に帰属し、企業独自の環境活動にはならない。だが、「導入の経緯では社会全体でのCO2削減と電力不足緩和に貢献することが重要という意識が強かった」と佐野貴志経営企画室長は振り返る。そのため、長期的な発電の信頼性や確実性を重視した発電システムを構築した。

 その1つが塩害対策だ。千葉工場は「重塩害地域」と呼ばれる海岸から500m以内に立地する。塩害の影響は工場敷地内でも見られ、海に近い工場建屋ほどさびが発生しやすい傾向がある。そこで太陽光パネルは、パネル向け塩水噴霧試験の国際規格「IEC61701」で最高ランクの「重度6」適合品を採用した。