試作はここ四半世紀ほど、削減されるべきものと考えられてきた。デジタルデータによるシミュレーション主導の設計開発に比べ、手間とコストがかかるからだ。しかし、試作はなくならなかった。それどころか、新たな役割を得て、復活する兆しが見える。今、使う人の“感性”にマッチするという、新たな価値を目指す製品も増えた。デジタルデータでは造り込みきれない価値も、試作と評価の工夫によって実現できる。さらに、3Dプリンタの登場などの試作技術の進化により、弱点だった手間とコストの問題が軽減されつつある。新たなテーマの試作で製品力を高め、高速な試作で開発力を強くする。パワーアップした試作に取り組む企業が増えている。 (中山 力、木崎健太郎)