千葉大学 野波教授の開発成果を応用

 こうした条件を備えた小型無人ヘリコプターとして着目したのが、千葉大学の野波健蔵教授の研究成果だった。

 野波教授は、自律飛行できる小型の電動無人ヘリコプターを開発していた。複数の回転比翼を使って飛ぶため、「マルチコプター」と呼ばれる。

 内蔵するセンサーによって、方向や傾き、高度などを検知して姿勢制御し、GPS(全地球測位網)を基に、あらかじめプログラミングした軌道に沿って、目的地まで自律飛行する。

 野波教授は、マルチコプターの技術開発や応用展開を産学連携で実現するための組織として、「ミニサーベイヤーコンソーシアム」を2012年に設立した。中部電気保安協会は、2013年に同コンソーシアムに参画し、太陽光発電所の点検用無人ヘリコプターの作製を依頼した。

 小型の無人ヘリコプターは、空撮では豊富な実績がある。だが、太陽光発電所の点検となると、ただ写真を撮るだけでは情報量が足りない。通常のデジタルスチルカメラに加え、温度分布を把握するため赤外線カメラの搭載を検討した。

 ただし、赤外線カメラは、野波教授が開発したヘリコプター全体に対して、寸法が大きく、重い(図3)。そこで、専用の部材を使って固定したほか(図4)、赤外線カメラを搭載しながら飛んでも、飛行の安定性を損なわないように工夫した。

図3●搭載する赤外線カメラは小型無人ヘリコプターに対して重量が重く、寸法が大きい
(出所:中部電気保安協会)
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図4●専用の部材(左)を使って赤外線カメラを固定(右)
(出所:中部電気保安協会)
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