天竜川の治水対策用の土砂採取地跡に建設

 「飯田太陽光発電所」は、飯田市の川路地区にある里山の中腹に立地する。川路地区は、「川の路」の地名のとおり、天竜川に接した低地が多く、たびたび、洪水による被害を受けてきた。

 このため、最寄り駅である、JR飯田線の川路駅を開設当初の場所から移設するなど、水害に備え、さまざまな手を打ってきた。

 同発電所の立地場所も、こうした治水対策に使う土砂の採取地だった。土砂の採取という用途から、飯田市が所有し、工業用地として整備された場所だが、道路を挟み田畑が続いており、のどかな里山の一角という風情である(図2)。

図2●周囲に田畑が続いていることからも、日射量に恵まれていることがわかる
(出所:日経BP)
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 工業用地といっても、田畑が隣接するために、地域の空気や水質などに影響を与える産業の立地は難しい。その点、相対的に太陽光発電に向く場所だといえる。

 また、日射量に恵まれている上に、里山の上から冷たい風が下りてくるなど、比較的、涼しい気候であることも、太陽光発電に好都合だった。現在、主流の結晶シリコン型太陽電池は、気温が高くなると発電効率が落ちてしまう性質を持つ。結晶シリコン系の太陽光パネルを選んだ場合、気温の高い地域に比べ、特に夏の発電量の低下を抑制できる。

 この土地の上にある高台には、飯田市と中部電力が建設した出力1MWの「メガソーラーいいだ」がある。飯田市は、内閣府の「環境モデル都市」の一つで、再生可能エネルギーの導入に積極的な上、「メガソーラーいいだ」の実績から、周辺住民の理解を得やすい。

 こうした理由から、第一実業が飯田市に打診し、土地を借りてメガソーラーを建設することになった。

 二つの区画の合計1万4601m2の土地に、3990枚の太陽光パネルを設置した。それぞれ別に連系するのではなく、一つの発電所として一カ所に集電し、連系する構成にした。年間予想発電量は、一般家庭約300世帯分の消費電力に相当する約110万kWhを見込んでいる。