雪に強い架台で東北、北関東にも進出

 固定価格買取制度が始まってから、地元北海道での市場開拓に本格的に乗り出した。ここ十数年、北海道は全国的にも景気低迷の影響が大きく、加工業などを含めてものづくり企業の減少が著しい。実は道内の太陽光発電所は道外の事業者による建設も多く、架台も大部分が道外から持ち込まれているのが実態だ。北日本サッシ工業は道内企業の強みを生かすべく、“短納期”に力を入れた。「見積もりの相談や納品した建設現場から問い合わせがあればすぐに飛んでいく」(強口社長)。伊藤忠丸紅鉄鋼などの大手商社や大手鉄鋼メーカーとつながりの深い富安から原材料を仕入れていることも、受注から納品までの短納期化に有利に働いた。

図3●北日本サッシ工業の工場内に並ぶ加工設備(出所:日経BP)
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図4●架台用の穴あけ治具を取り付けて既存のプレス機を流用(出所:日経BP)
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図5●北海道北見市留辺蘂町に建設された出力2MWのメガソーラーに採用された“北海道仕様”の架台。パネルの設置高さは2mで、傾斜角は40度
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 加工設備はスチールコンテナの加工に用いていた折り曲げ機などをできるだけ流用し、可能な限りの低コスト化を目指した(図3、4)。

 また、道内の建設コンサルタントと提携し、独自の“北海道仕様”にも磨きをかけた(図5)。積雪沈降圧や斜面積雪移動圧といった積雪荷重を織り込んだ架台の設計は、道内の気象と建築を熟知した設計者の知識と経験がモノを言う。道外から持ち込まれた架台の中には雪でつぶれたものもあったが、道内の地域ごとの積雪に対応した架台が北日本サッシ工業の大きな特徴になっている。多雪地域向けの特殊架台も豊富だ。

 強口社長は「道内で伸びてこられたのは、道内での取引を重視する道内事業者の共同体精神に助けられた面が大きい。小さい企業ながら道内の活性化や雇用に貢献していきたい」と話す。積雪対応の実績を生かして、今後は東北や北関東への販売にも力を入れていく。架台で回復した体力をベースにスチールコンテナの販売地域も広げていく考えだ。

 この6月、強口社長は親会社の富安の社長に就任した。だが、北海道でものづくりを続けたいという気持ちはますます強くなってきた。北日本サッシ工業の社長も当分、続けていくつもりだという。