ドイツに学ぶ農業と太陽光発電

 ドイツは作物栽培と家畜の肥育を組み合わせた混合農業が盛んで、農業振興策によりかつて60%台だった食料自給率(カロリーベース)は93%にまで高まった(農林水産省による2009年の試算値)。「農業を大切にするドイツの姿勢から日本が学ぶべきことは多い」と強口社長は話す。そして、鉄と農業が結びついた北日本サッシ工業の存続を支えるべきという気持ちを強く持った。

 強口社長には広い平野で玉ねぎやジャガイモを栽培する北見の景観がドイツの農村と重なって見えた。そのドイツの田園風景を特徴づけていたもう1つの要素が太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーだった。再エネの普及は国の政策が大きいが、ドイツでは伝統的な農村の自立意識に支えられた地域のエネルギー協同組合による運営が各地に広がっているのが大きな特徴だった。再エネの収入が農業経営の下支えになっている。強口社長の目には、そんなドイツの農村が一つの理想に映った。

 国内でも2011年8月に再エネの固定価格買取法が成立し、2012年7月からの施行が決まったとき、北海道もドイツと同じように、太陽光発電所が広がるのではないかという直感が働いた。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公表している日射量のデータベースを調べてみると、北海道の中でも道東は日射量に恵まれ、全国的にも良好な地域だと分かった。

 だが、強口社長自身はもちろんほかの経営幹部も社員も周囲に太陽光発電を詳しく知る者はいない。強口社長は人脈を頼りに手掛かりを全国に求めた。

 固定価格買取制度が始まる前年の2011年、丸紅時代からの知り合いだった大手鋼板メーカーの元社長から北海道・十勝地域にある金属建材の加工・販売会社を紹介してもらった。会いに行くと、その建材会社の社長からいきなり「施工は自分たちでやるから陸屋根住宅30棟分の架台をつくってもらえないか」と打診された。当時、住宅用はパネルメーカー主導の色合いが強く、架台製造も新規に参入するのは容易ではなかった。強口社長は、経験のない自分たちにあえて仕事を発注する建材会社の社長に驚くとともに、道内の事業者同士の絆を大切にしようとする姿勢を感じ取ったという。建材会社社長は北日本サッシ工業の工場を訪れ、架台製造の手ほどきまでしてくれた。