電圧上昇制限の設定値とパワコンの選定

 現場でPCSの状態を確認したところ、4台中3台の出力抑制の表示ランプが点灯していました。このため、次の調査を実施しました。

(1)4台のPCSの電圧上昇制限設定値の確認、(2)連系分電盤での電圧の測定です。(2)の電圧の測定については、(ア)PCSが出力制限して運転している時の系統電圧、(イ)連系を停止した時の系統電圧、(ウ)電圧上昇制限値を「無効」に設定して連系した時の系統電圧、(エ)電圧上昇制限値を「無効」に設定し、かつ、PCSを1台ずつ連系した時の系統電圧を、それぞれ測りました。

 調査の結果、(1)の4台のPCSの電圧上昇制限設定値は、それぞれ「111V」に設定されていました。

 ここで、留意点があります。今回の太陽光発電所では、住宅用のPCSを使っていたことです。住宅用のPCSには、出力10kW以上の産業用のPCSであれば、一般的に備わっている、複数のPCS間で並列して同期運転する機能が備わっていません。このため、それぞれ単独で系統の電圧と同期して連系しています。

 続いて、連系分電盤において、(2)のそれぞれの電圧を測定しました。(ア)のPCSが出力制限運転している時の系統電圧は110V、(イ)の連系を停止した時の系統電圧は102.5V、(ウ)の電圧上昇の制限値を「無効」にしたときの系統電圧は111.9Vでした。

 この結果から、電圧上昇の制限値を「無効」にした時に、PCSを4台とも運転すると、系統電圧は電圧上昇の制限値である111Vを超過しており、電圧上昇制限機能を有効にすると、出力抑制が働いてしまうことがわかりました。PCSを1台ずつ順番に連系運転する台数を増やした時には、図2のような電圧となりました。

図2●単機ごとに連系しているため、PCSごとの連系電圧が上昇し、出力抑制機能が働く
電圧上昇制限機能を「無効」にし、1台ずつ連系した場合の電圧(出所:中部電気保安協会)
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 今回の調査の結果として、顧客の発電事業者には、住宅用のPCSを使っていたために、単機ごとに連系しているために、それぞれのPCSごとの連系電圧を上昇させ、結果として、系統電圧が上昇し、それがさらに連系電圧を上げ、最終的に電圧上昇制限値よりも高くなってしまい、出力抑制機能が働いたことによるものと伝えました。