このシリーズでは、中部電気保安協会の本店 保安部 太陽光プロジェクトチームによる、太陽光発電システムのトラブル事例や、それらのトラブルへの対応策、所属する電気主任技術者にどのように助言しているのかについて紹介する。同チームがまとめたトラブル事例集を基に、同チームの寄稿によって構成している。

 太陽光発電向けのパワーコンディショナー(PCS)は、「出力抑制機能」を備えています。連系する系統側の電圧が、電気事業法施工規則が規定している許容変動範囲の上限値、すなわち、標準電圧100V時で101±6V、または、標準電圧200V時で202±20V以内という範囲を逸脱しそうな場合に、系統電圧を規定値内に維持するための機能です。

 ただし、この機能が働く場合には、太陽光発電システムから系統への出力が抑制されてしまいます。

 出力抑制機能が適切に働くということは、PCSが正常に稼働していることを意味します。しかし、発電事業者にとっては、売電量が想定より減ってしまうため、太陽光発電システムに生じた「トラブル」の一つに捉えられる事例といえます。

 今回は、想定していた出力が得られず、疑問に感じた顧客から依頼された調査の結果、こうしたPCSの出力抑制機能が働いたことが原因だった例を紹介します。

 中部電気保安協会が調査に向かった太陽光発電所では、住宅用の定格出力5.5kW機が3台、同2.7kW機が1台と、合計4台のPCSを並列運転していました(図1)。

図1●連系盤で系統電圧を測定
住宅用の4台のPCSを使い、それぞれ単独で連系する設計だった(出所:中部電気保安協会)
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 晴天時に、4台のPCSがすべて稼働しているにもかかわらず、出力が想定よりも低いために、顧客からの依頼で、これらのPCSの出力の低下の原因を調査しました。