「BRMS」(ビジネスルール管理システム)というテクノロジーをご存じでしょうか?

 一昨年ごろから、日本のIT業界に旋風を巻き起こしているテクノロジーです。BRMSを一言で申し上げれば、ビジネスオペレーションで必要とされるルールをITで統制管理する仕組みを提供するもの。ITに精通していないビジネスユーザーでも、ルールの編集や変更が容易にできます。

 eヘルスケアやHealth2.0といった欧米におけるムーブメントを背景に、ヘルスケア業界においても、新しいビジネスモデルを支えるテクノロジーの1つとして、BRMSに熱い視線が注がれるようになってきました。それは、患者に対する医療行為から健康な消費者に対するウエルネスプログラム、請求支払プロセシングや電子レセプトのようなバックエンドの業務に至るまで幅広く活用されています。

 まず本解説の第1回目は、BRMSの適用効果を理解していただくために、デジタルヘルス分野でのBRMSの活用事例を3つほどご紹介していきます。

医療行為に関する知識の集約管理と自動化

 米Parkview Health社(以下Parkview社)は、インディアナ州に拠点を置く非営利によるコミュニティベースのヘルスサービスを提供する事業体です。従事している人間は8700人以上にも及び、数百万の医療行為と患者に関するデータを管理しています。

 Parkview社は数年前に、米IDX Systems社(当時、現在はGE Healthcare社の事業部門)のEMR(電子カルテ)ソリューションである「Carecast」を採用しました。これは、電子データの管理やワークフロー機能だけでなく、強力なBRMS機能を持っていました。例えば、臨床医や薬剤師、看護師に対して、治療のタイプに応じた適切な薬品とその服用量に関するアラートとガイダンスを提供することにより、患者の安全性を著しく向上させることに成功しました。さらに、体重をはじめとする身体的特徴をベースにした児童向けの投薬ルール、強度の外傷を持つハイリスクな患者に対する処置ルールなどの特殊なルールまでを統制管理しています。

 EMRソリューション採用前は、患者の記録は全て紙ベースで保有しており、医療行為に関する知識は十分に明文化されていませんでした。また、その記録や知識は部門ベースで管理されており、患者が内科から外科に移ると紙ベースで渡されていました。

 Parkview社では、ヘルスケアサービスの地域リーダーとなることをビジョンに掲げ、医療行為で得た教訓を、BRMSを中核とする知識管理フレームワークに蓄積し続けているようです。