「人に貸すぐらいなら、自分で・・・」

 山内社長は、市からの要請を契機に太陽光発電事業に興味を持ち、事業性や建設方法などを調べ始めた。太陽光関連の展示会に足を運んだり、メガソーラーで先行する道内の事業者などを訪ねたりした。その結果、「人に貸すぐらいなら、自分でやってみよう」と一念発起した。実は山内社長は、ティー・ワイのほか、土木・建築業の山内組(北海道河西郡更別村)も経営する。架台の基礎工事などは、自社の土木技術などが生かせるし、今後、新事業として伸ばせるとの読みもあった。

図2●「ティー・ワイ帯広大正太陽光発電所」の航空写真(出所:ティー・ワイ)
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図3●らせん形状の杭基礎で施工した(出所:日経BP)
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図4●設置角は40度、地上高は1.5mにした(出所:日経BP)
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 こうして2012年9月に着工し、翌年2月に帯広市中島町に竣工したのが、「ティー・ワイ帯広大正太陽光発電所」だ(図2)。山内組が施工を担い、太陽光パネルは、インリー・グリーンエナジー製の単結晶シリコン型を4550枚、出力1205kW分設置した。パワーコンディショナー(PCS)はGSユアサ製(250kW機・5台)を設置した。定格出力は1250kWになるが、北海道電力への契約売電量は990kWに抑えた。これは、設計していた当時の規定では、1MWを超えると専任の電気主任技術者を配置する必要があったからだ。だが、その後、専任の資格者が必要な太陽光発電設備は2MW以上に規制緩和された。「設置スペースはまだ十分余裕があったので、規制緩和の情報をもっと早く公表してくれれば、1MW以上設置したのに」と山内社長は悔やむ。

 基礎には、らせん形状の杭タイプを使った(図3)。地中1.5mまで埋め込んで強度を確保した。道内では比較的、積雪は少ないとはいえ、ひと冬に30~50cm程度の雪が5回程度は降る。そのため降り積もった雪が滑り落ちるように、パネルの設置角を40度とし、落ちた雪がパネルに達しないよう1.5mの設置高を確保した(図4)。狙い通り、積雪の後に晴れると積もった雪は自然に滑り落ちた。だが、下にたまった雪山が高くなってパネルにつながることもあり、そうなると滑り落ちない。そのため定期的に重機でパネルの下を除雪する必要があった。