パネルの縦線と横線を頼りに走行

 パネル表面上を自律走行できるのは、検査するパネル型番とそのセル配置情報を事前に「アドレス」として記憶しておき、CCDカメラの画像を処理することで自分がアドレスのどこに位置するか把握しているからだ。カメラはパネル表面の格子模様を認識し、画像処理で縦線と横線を判定する。「格子」とはセル(発電素子)とセルの境、セルのなかに2~4本ある電極線(バスバー電極)だ。縦線は、直進する際の支持線となり、曲がり始めたら縦線の角度がゼロになるように補正する。また、横線は、横切った本数を基に最初の位置から何枚目のセルを走行しているのかを推定するのに使う。

 プロトタイプの検査ロボットは、CISやアモルファス(非晶質)シリコンなど薄膜系パネルと、バックコンタクト方式の結晶シリコン型パネルには対応していない。その理由は、これらの方式のパネルには、表面にバスバー電極の線がないからだ。

セルごとに導通の健全性をマップ化

 パネルの異常を検針するセンサーには、戸上電機製作所の故障モジュール特定装置「セルラインチェッカ」を採用し、ロボット前部に装着した。検査センサーは、アーム式になっており、任意のセルの位置に移動する(図6)。同検査装置は、産総研の加藤氏も利用しており、その導通検査で実績があるという。あらかじめアレイの接続端子箱に発信器を取り付けておき、微小な信号電流を流すことでモジュール内に発生する誘導磁界をセンサーで受信する仕組みだ。受信感度から配線状態を把握し、セルごとに導通の健全性を、「導通」「要観察」「不導通」の3段階に評価し、マップ化する。

図6●パネルの検査ルート(出所:太陽/風力エネルギー講演論文集・2013「太陽電池モジュール検査ロボットの開発」山田昇、忠海俊也、加藤和彦ら)
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 将来的には、導通試験以外の検査手法を開発してロボットに搭載することで、多様な検査を可能にする予定という。また、現在は、ノートパソコンとケーブルで情報をやり取りしながら、運用しているが、無線化してケーブルをなくす計画だ。並行して、装置を小型軽量化する改良にも取り組む。

 アトックスでは今年4月、ロボットに関する事業を展開する「ロボティックスエンジニアリング部」を新設した。新開発のロボットは外部に販売するのではなく、サービス事業のツールとして自社社員が運用する方針だ。福島第一原発での除染作業などに加え、来年度には、PVモジュール検査ロボットによる太陽光パネルの点検サービスを開始する計画だ。このほか、千葉大学と連携し、自律型電動ヘリコプター(ミニサーベイヤー)の研究にも取り組んでいる。「高度なロボットの利用には、必ず管理ノウハウが必要になる。こうした“ロボットマネジメント”をサービス事業として提供したい」と、アトックスの忠海俊也・ロボティックスエンジニアリング部副部長は言う。