「ロボコン」では知られた旋回技術

 アトックス・技術開発センターの忠海俊也・ロボティックスエンジニアリング部副部長は、「東日本大震災以来、原発事故の収束を第一に取り組んでいるが、今後の成長分野として再生可能エネルギーにも注目し、原子力分野で培った技術を生かせる道を探ってきた」と言う。そんななか、山田准教授や加藤氏と出会い、検査ロボットの共同開発に発展したという。太陽光パネルのなかには、検査のために足場の必要な高所に設置してある例もあり、作業員の安全のためにもロボットによる点検サービスの需要があると考えた。

 開発に際して、次の3点を目標に置いた。(1)設置角30度の太陽光パネルでも滑らない。(2)パネル(モジュール)とパネル間の隙間を超えて走行できる。(3)コンピューターが走行経路を判断し自律走行できるーー。デモ走行したプロタイプ機で、すでにこの3点は、実現した。CCDカメラで画像認識しながら走行し、パネルとパネルの隙間が10cm以内なら自力で乗り越えられるという。表面状態(清浄度)が良好なら設置角30度まで対応できる。採用したゴム材料の摩擦力を測定し、約10kgの本体が滑らないためのクローラー接触面積を算出したという。ただ、雨天の場合、摩擦力が落ちるので走行できない。

 走行方法で特徴的なのは、曲がる際、本体を持ち上げる旋回手法だ。戦車や重機のようなクローラー機構の乗り物は通常、左右のクローラーを互いに逆向きに回転させる「超信地旋回」で向きを変える。ただ、この旋回方法は、路面への負荷が大きい。太陽光パネルの上で、超信地旋回を採用した場合、ガラス面に傷がつく恐れがある。そこで、本体の中央に全体を浮かせて回るための旋回機構を設けた(図4)。ゴムを貼った直径約25cmの円盤をガラス面に押し付け、本体を浮かせた状態で90度回転させることで、クローラーがガラス面をこすらないようにする(図5)。「こうした旋回手法は、ロボコンに出場するモデルでよく使われている手法」と山田准教授は言う。

図4●「PVモジュール検査ロボット」プロトタイプの構成(出所:太陽/風力エネルギー講演論文集・2013「太陽電池モジュール検査ロボットの開発」山田昇、忠海俊也、加藤和彦ら)
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図5●回転板を使った旋回の仕組み(出所:太陽/風力エネルギー講演論文集・2013「太陽電池モジュール検査ロボットの開発」山田昇、忠海俊也、加藤和彦ら)
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